小椋奈都美

千葉県柏市で、レンタルスペース「FINDIA柏」を運営する小椋奈都美さん。デザイナーとして仕事をする中で、自身の作業場所を持ちたいと考えたことを機にレンタルスペースの運営を開始しました。2020年には、スペースマーケット(レンタルスペースの貸主と借主をつなぐプラットフォーム)にて最もゲストに支持されたスペースを表彰する「BEST HOST 2020」にてベストホスト賞を受賞された小椋さんに、レンタルスペース運営を手掛けることになった決断について話を伺いました。

――FINDIA柏の運営を決断したきっかけは何だったのでしょうか?

もともと私自身がデザインの仕事をしていたこともあり、自宅以外に作業場所を持ちたいと考えて駅近の物件を探していました。気分転換に訪れた鎌倉旅行をきっかけに、「もっとゆっくりステイしたり、住みながら働けたりするような場所があったらいいな」と思うように。その後、宿泊できるレンタルスペースを運営されている方のブログを見つけ、鎌倉旅行の1カ月後にFINDIA柏の物件を契約しました。

――レンタルスペースの場所として柏を選ばれた理由をお聞かせください。

柏は私が学生時代からよく訪れていた馴染みのある場所で、東京にも近く学校も多い。友人同士の集まりや同窓会などの需要があるのではないかと考えました。

場所は駅から近いことが条件。柏駅の近くには幹線道路がありますが、そこを超えるには地下道を通らなければいけません。そこで心理的な距離の近い幹線道路の手前までのエリアで物件を探しました。間取りもワンルームよりはいくつか部屋があり、仕事の打ち合わせもでき、パーティーもできる、スペース内で気分を変えられるような空間をつくりたいと思って探していたところにこの物件と出会いました。

――内装へのこだわりについても教えてください。

もともとは築年数も古く、フローリングが敷き詰められているだけのシンプルな部屋だったので、運営にあたっては物件の大幅リノベーションを施しました。まずテーマカラーを決め、テーマカラーに似た色調、雰囲気のインテリアを取り揃えていきました。

実は「FINDIA」という名前自体、インドをイメージしています。学生の頃に一度バックパッカーでインドに赴き、その後、20代半ばにもう一度女性の起業家支援のために訪れたことがあります。その時は事業を軌道に乗せるのが難しく1年ほどで帰国してしまったのですが、当時の取引先の社長とはいまだに仲も良く、コロナ前はよくインドにも足を運んでいました。

そんな深い縁のあるインドには私の好きなインテリアブランドがあり、そのブランドではビビットな色調のアクセントカラーが採用されています。そこでFINDIAにもその雰囲気を取り入れたいと考え、自分の好きな緑をテーマカラーに据えて内装を整えていきました。

小椋奈都美

小椋さんの好きなエメラルドグリーンをテーマカラーに据え、華やかながら落ち着いた雰囲気のある内装に仕上げた(写真提供:FINDIA)


利用者の笑顔を見られる瞬間が、スペース運用のやりがい

――FINDIA柏はどのような方がどのような目的で利用されることが多いのでしょうか?

FINDIAにはテーブルやTVのある広い部屋とキッチンがあるので、パーティー利用が多いですね。コロナ禍には少人数パーティーやリモートワーク需要も多かったように思います。1人で仕事に使うお客様はリピーターになってくださる方もたくさんいます。大きなモニターがあるので、モニターを使って海外とリモート会議をされている方もいらっしゃいました。

面白いなと思ったのは、オンラインお見合いに利用されている方もいたんですよ。リアルな部屋っぽさもありながら、リングライトなどの設備も取り揃えているので便利に感じていただけているようです。商業利用の場合にも割り増し料金を設定していないので、商品撮影などに利用される方もいらっしゃいます。

小椋奈都美

FINDIA柏は2DK(33.8㎡)、最大収容人数10名(推奨:2~8名)という広めの間取り。JR常磐線柏駅から徒歩2分の好立地にある(写真提供:FINDIA)


――レンタルスペースを運営する上でのこだわりがあればお聞かせください。

ご利用用途をお伺いして、なるべくご希望に沿えるよう準備しています。

例えば、ママ友のパーティーの予約が入った際には、予約が入ったその日に子ども用の食器やおもちゃを買いに行きました。他にも「スマホから生配信をする」と聞いた際には自撮り棒や撮影用のライトなどをご用意しました。

UNOや人生ゲーム、ホワイトボードや筆記用具などの小物が充実してきたのも、なるべくご希望に沿う体験を提供できるようにと考えて運営してきた結果だと思っています。

――レンタルスペース運営のご苦労はどのような点にありますか?

どれだけ注意を払って準備したとしても、予期せぬトラブルが起きることです。映画鑑賞をしたいとご予約いただいたお客様から、当日DVDプレイヤーが故障したと連絡が入ったことがありました。他にもご予約いただいたタイミングで建物の断水が起こってしまったこともあります。

DVDプレイヤーの故障時には急ぎ電気店で機材を購入してゲストにお届けし、断水の際には水の入ったポリタンクやペットボトルをたくさん準備しました。細かなトラブルを完全になくすことは難しいですが、ご予約のあるときはすぐに駆け付けられる体制を整え、トラブル時には迅速に対応することを心がけています。

――一方で、レンタルスペース運営の楽しさやビジネスとしての面白さはどのような点にあるとお感じになりますか?

ハロウィンやクリスマスの際には小物を買ってきて気合いを入れて部屋を装飾するようにしています。結構時間がかかって大変ではありますが、入室の際に監視カメラでお客様の様子を確認していると、すごく喜んでくださっているのが画面からも伝わってくるんですね。そんなときは、とてもやりがいを感じます。

また、FINDIA柏を何度もご利用いただいていたリピーターのお客様から、就職を機に遠方に引っ越してしまうので、「最後の思い出作りに」と彼氏さんとご利用いただけたことも本当にうれしかったですね。

――最後に、レンタルスペースを利用している方にメッセージをお願いいたします。

「この部屋に来て良かった!」と思っていただけるよう、万全の体制でお部屋をご準備しています。ご予約のときにご要望があれば、可能な範囲で対応していきたいと思っていますので、ぜひお気軽にお問い合わせ・ご予約いただければと思います。たくさんの方のご利用をお待ちしています!

(文/岸のぞみ)

小椋奈都美(おぐら・なつみ)
株式会社GOOD FORWARD 代表 アパレル業界で営業を経験したのち、広告業界で営業兼デザイナーとして働く。その後、書籍で読んだ空き家をリノベーションして貸し出す賃貸事業に興味を抱き、2019年、広告デザイン業と賃貸業で起業。自宅がオフィスとなったため、衣食住スペースと仕事場を分けたいと考え、独立して半年後にレンタルスペース事業を開始。2020年、スペースマーケット主催「BEST HOST 2020」ベストホスト賞を受賞。現在、レンタルスペース「FINDIA柏」「ARTERNA(オルタナ)柏」の運営を手掛ける。


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