恋人・夫婦仲相談所所長 三松真由美さん

恋人・夫婦仲相談所所長 三松真由美さん

パワーポイントもスマートフォンもなかった33年前。多忙な医師の夫と暮らし、孤独な育児に悩んでいた三松真由美さんは、ママたちのスキルを集めたサークルを立ち上げ、のちに法人化した。経営経験はもちろん、財務も経理も未経験。専業主婦だった真由美さんは、どのように会社経営の道を切り開いていったのだろうか。第1回目は真由美さんの人となりと決断の内容を紹介する。

夫婦の寝室事情に注目
女性が抱える性の悩みに答える

 三松真由美さんとはどのような人か。真由美さんの知り合いに尋ねると、ほぼ全員が「パワフル」、「エネルギッシュ」と答える。あふれ出るパワーは、還暦を過ぎているとは到底思えない。会うときは、なぜかいつも晴天。およそ「負」の印象とはかけ離れたところにいる。そんな女性だ。

 真由美さんの肩書きは複数あるが、その主軸ともいえるのが、恋人・夫婦仲相談所の所長。「セックスレス」が男女の問題として顕在化する前から、真由美さんは夫婦の寝室事情に注目してきた。

 「20年ほど前に夫婦仲相談所としてカウンセリングルームのようなものを立ち上げました。性のお悩みをはじめとする夫婦関係のお悩み相談にお答えしています。結婚していないカップルからもお悩みが多く寄せられたので、途中から『恋人・夫婦仲相談所』に改名しました」

 相談者の希望に応じて、対面やオンラインで対応する。真由美さんに話を聞いてもらいたくて、新幹線や飛行機、夜行バスで会いに来る人もいるという。20代から80代まで、相談者の年齢層は幅広いというが、なかでも多いのは30代・40代の女性だ。

 「本当に悩んで悩んで悩んで、“THEラスト駆け込み寺”みたいに、意を決して来られる方が多いんですよ」

 20年間、女性たちのお悩みを聞いてきた真由美さんは、「時代が変わっても、悩みの質は変わっていない」と話す。

 「もちろん、テクノロジーが発達して“バーチャルセックス”という言葉が出てきたり、女性向け風俗が増えたり、性の形は変わっています。でも、セックスレスやED(勃起障害)といった基本的なお悩みは、人類が続く限りなくならないと思います。AIに相談して夫婦間セックスレスが解消されますか?」

 では、悩みの「数」はどうだろうか。
「増えていると言えると思います。ただ、それは時代背景によるものが大きくて、実際にはバブルの時代からセックスレスの悩みはあったと思うんです。でも、当時はむしろ夫の浮気や、『夫が若いお姉ちゃんと赤坂プリンスに行っちゃいます』みたいな悩みが多かった。また、Web掲示板もSNSもなかったので、家にいる主婦たちの悩みが顕在化されていなかったんですね。そう言えば、不倫バッシングはあまり聞かなかったな。やむなしの空気感だったのでしょうか」

 恋人・夫婦仲相談所のメルマガ登録者数は1万3000人。TwitterやInstagramなどでも精力的に夫婦やカップルが円満になるための秘訣を発信し続けている。
カップル仲や夫婦仲を良くするためのノウハウを書籍やWebメディアの連載でも発信。月10本以上抱える連載コラムは常にPVランキング上位を獲得ていることからも、このテーマにおける女性たちの注目度の高さがわかる。

複数のメンズサークルを運営
なぜか周囲はイケメンばかり

 もう1つ、真由美さんのライフワークとして特徴的な活動が、メンズサークルの運営だ。イケメンサッカーチーム「赤坂チェリー坊やズ」には60人もの選手が所属する。コロナ禍前はさまざまな企業のサッカーチームと定期的に試合をしていた。現在は少数精鋭で試合を企画している。

恋人・夫婦仲相談所所長 三松真由美さん

真由美さんが監督を務めるイケメンサッカーチーム「赤坂チェリー坊やズ」。元Jリーガーなど錚々たるメンバーが集まっている

企業のサッカーチームに真由美監督自ら試合を申し込んで定期的に試合をする。強豪チームとも互角に戦う


 そのほか、イケメンドクターズ、イケメンパイロッツ、イケメン弁護士ズ、イケメンSEズ、イケメンコンサルタンツ……など、複数のメンズサークルが存在するという。真由美さんの周りには常に若いイケメン男性が絶えない。彼らはなぜ、自分の母親ほどに年の離れた真由美さんを慕うのだろうか。

 Jリーグや欧州のチームでプレイしたこともあり、長く赤坂チェリー坊やズに所属している柴村直弥選手は、2010年の冬に、知り合いの紹介で真由美さんと会った。

元Jリーガーの柴村直弥選手

赤坂チェリー坊ヤズで長くプレイをしている、元Jリーガーの柴村直弥選手。実は「サッカー界でも真由美さんはちょっとした有名人」だと話す


 「イケメンが集まっているサッカーチームだと聞いて、自分が行って大丈夫かな? と最初はすごく緊張して行ったのを覚えています。真由美さんの第一印象は、すごくエネルギッシュでフランクな人。自分がちょうど欧州のチームにチャレンジしたいと思っていたときで、真由美さんにパワーをもらったおかげで、実現できました。
帰国して、本格的にチェリー坊やズの試合などに参加させていただいています。チームには10代の学生から40代まで、幅広い年代の男性がいて、真由美さんを中心に1つにまとまっている感じですね。真由美さんは懐が深く、面倒見がいい。とても愛情深くて、関わった人たちを幸せにしたい、という気持ちが伝わってきます」(柴村選手)

 イケメンドクターズに所属している美容皮膚科医の森大(もりだい)先生にも話を聞いてみた。出会いは約10年前、森先生もやはり友人の紹介で、真由美さんの誕生日パーティーに誘われたのがきっかけだという。

 「誕生日パーティーって何だろう? と思いながら、面白いことがあるなら行ってみようかな、と軽い気持ちで参加しました」(森先生)

 六本木の広い会場に100人以上が集まっており、場内は熱気に包まれていたという。“東京ボーイズコレクション”というメンズファッションショーが、誕生日パーティーの趣旨だった。
 「真由美さんの印象は、小柄なんだけど、すごくエネルギッシュ。人生ってこんなに自由に生きていいんだな。好きなことを突き詰めてていいんだ、と思える人でした。
 それからイケドク会(イケメンドクターズが集まる会)に呼んでいただいたり、真由美さんの紹介でメディアの取材を受けたり、いろいろと気にかけていただいています。イケドク会のメンバーだけで200人くらいはいると思います。さまざまな担当医がいるので、総合病院が作れますよ(笑)。入会資格は、『イケメンで謙虚なこと。天狗でなければいい』ということでした。出会って10年経っても、真由美さんの印象はまったく変わりません。ずーっと元気なまま。真由美さんと出会わなかったら、経験できなかったことがたくさんあったなぁと思います」(森先生)

イケメンドクターたちが集まる「イケドク会」のメンバー、美容皮膚科医の森大先生。真由美さんを通してさまざまな出会いに恵まれた。「コロナ禍で真由美さんの還暦パーティーができていないのが残念。落ち着いたら盛大にやりたいですね」と話す


20歳年下の男性と3度目の結婚
「毎日ラブ度が上がるの!」

 私生活では3度の結婚を経験。1人目の夫との間に長女を授かり、今は孫が2人いる。2015年に結婚した今の夫は、20歳年下だ。結婚から7年、夫との関係は?

 「ラブラブですね。本当に好き。毎日ラブ度が上がります。生きてて良かった!」

 なぜ、関係を維持できるのだろうか。

 「1回目、2回目の反省が生かされているからです。『これはしちゃいけない』『こういうことを言うと相手は傷つくだろうな』と、そういった細かい反省点がたくさん蓄積され、上手に対処できるようにプログラミングされているんです。だから、結婚は2回、3回しようね、ってみんなに言っているんですよ(笑)」

 多くの人は、20代、30代で結婚すると、恋を卒業する。常に恋愛を続けるにはエネルギーが必要だが、恋を続けていることが真由美さんの若さの秘訣なのだろうか。

 「恋をするのにエネルギーが要る? そんなこと、考えたこともないわ。若い頃から、彼氏と別れたら、すぐに次、って思っていましたよ。失恋して泣いたことは1度もありません」

 毎日、愛のコミュニケーションを欠かさないのも真由美さんメソッド。
 「彼は仕事から帰った瞬間から、『ただいま』『愛してるよ』『会いたかったよ』と言ってくれます。それは、私がそうするからです。夫婦って合わせ鏡みたいなものだから、ちゃんと私からgiveしないと、彼もgiveしてくれないですよ」

最大の決断は、34歳での会社起業
能力の高い育児中のママを集めた

 公私ともに充実している真由美さんの「人生最大の決断」を聞いてみた。数ある転機の中でも、最も大きかったのが、「34歳の会社起業」だという。

 1回目の結婚時、専業主婦として子育てをしていた真由美さんは、子どもではなく、ママにスポットを当てるママサークル「B・B・B(ベイ・ブリッジ・ベイビーズ)」を立ち上げた。

サークルでは出産を機にビジネスの場から離れたママたちを集めた。時代的に、寿退社が当たり前の雰囲気だった。
 「履歴書を出してもらって、審査しました。とにかく過去の職歴にこだわったんですよ。大手企業で活躍していたような人もたくさんいました。能力が埋もれていたんですね。
結婚して子育てするために仕事を辞める女性が多かったんです。1人で家事や育児をして、夫とラブラブならいいですが、バブル時代ですから夫は家に帰ってきません。『24時間戦えますか』のテレビCMがはやったとき。そんな同じ境遇のママたちがたくさん集まったんです」

真由美さんが立ち上げたママサークルはメディアで話題沸騰となり、当時、多くの新聞や雑誌、テレビ番組で取り上げられた。写真は朝日新聞一面。NHKにも何度も取り上げられた


 最初の活動は、託児所つきのイベント開催。メディアで紹介されるごとに会員を増やし、最終的には1900人を超え、全国に支部を作るほどの巨大サークルへと成長した。その過程で、真由美さんは法人化を決意する。

 「悩みましたよ。ビジネスのことは何も分からないから、自分にできるのかなって。女性起業家コンテストで選んでいただいて、最初の資金として、1000万円ほどを融資してもらったのですが、それを何に使ったらいいかもわからない状態でした。実際は4億円まで融資可能と書いてあったんですが、そんな大金の使い方はまったくわかりません。とりあえず1000万円で株式会社ができるから、カッコいいなと思って……。1円起業なんてなかった時代ですよ」

 悩んだ末に1995年、34歳でエムネットジャパンを設立。その後、長く続くことになる起業家人生の第一歩を踏み出した。

(文・尾越まり恵)

プロフィール
三松真由美
恋人・夫婦仲相談所所長(すずね所長)・執筆家

恋仲、夫婦仲に悩む女性会員13,000人を集め、「結婚・再婚」を真剣に考えるコミュニティを展開。性を通して男女関係をよくするメソッドを考案。「セックスレス」「ED」「女性性機能」に詳しい。急激に伸びるフェムテック市場に乗り込むべく新会社Gladを設立。恋愛・夫婦仲コメンテーターとして活躍中。講演、メディア取材、連載多数。20代若者サークルも運営し未婚世代への結婚アドバイスも好評。ED診療ガイドライン作成委員経験。泌尿器科医師たちとテストステロン勉強会を結成。セックスレス改善に定評がある。著書『夫婦の「幸せ循環」を呼ぶ秘訣』 (講談社α新書)、『夫婦仲がよくなるちょっとした習慣』(kadokawa)、『新・抱かない男の見分け方』(スターツ出版)、「モンスターワイフ」(講談社)、『40歳からの女性ホルモンを操る53の習慣』(扶桑社)、『堂々再婚』(wave出版)、『「君とはもうできない」と言われまして』(kadokawa)ほか多数。ライフシフトの一環として、コミック作家を目指す。現在4冊のコミック原作の執筆を同時にこなす。KADOKAWA作品は絶好調の売り上げでドラマ化を視野に入れている。

公式サイト  http://fufunaka.com/
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