
2016年、人手不足解消のため、技能実習生を受け入れることを決めました。
株式会社河野は広島市に本社を構える食品に特化した総合物流企業です。父は河野の社長で、幼稚園の頃から「会社を継ぐんだ」ということを感じていました。自宅の隣に事務所があり、トラックでの貨物輸送の仕事は身近で格好よく、父は社長として社会的責任を果たしている存在として憧れていました。
大学卒業後は住友海上(現・三井住友海上)に入社し、営業職として4年ほど働いたのち、2005年、取締役として河野に入社。事故対応や安全教育、社内の管理などを担当していました。ところが入社9年目となった2014年3月30日、父が心筋梗塞で急逝します。突然のことでしたが悲しみに暮れる暇もなく、4月4日には社長就任を果たしました。会社の運営をどうしていくべきなのか戸惑いましたが、社員とその家族の生活もあります。「前に進もう」と腹をくくって決断したのです。
就任直後は経営者としての責任を強く意識するあまり、周囲に頼ったり任せたりすることがうまくいかない時期がありました。待遇を改善して働きやすい職場づくりに専念してきましたが、現場は常に人手不足。待遇を改善しようが給料を上げようが、なかなか人が集まりません。この状況を改善するための方策はないものかといろいろと調べ、人材派遣会社に相談する中で見つけたのが、外国人材の活用でした。当時すでに製造業の生産ラインや飲食店、コンビニチェーンなどで外国人雇用が進んでおり、外国人材を受け入れるための技能実習という制度があることを知りました。思い切って担当役員に相談し、人手不足解消の打ち手の1つとして導入することを決めました。2016年のことです。
外国人受け入れのための申請書を提出し、各地に行って面接を実施。現地での教育期間を経て、来日してさらに1カ月間の教育期間。その後、実際に社内に実習生として受け入れていきます。文化の違う外国人と一緒に働けるのか、言葉の壁がある中できちんとルールは徹底されるのか、正しく教育はできるのか、万が一事故が起こった際はどのような対応をするのか……。リスクを考え出すとキリがなく、業界にモデルケースもまだ多くはありませんでした。当初は現場も外国人の受け入れには懐疑的で、どのように受け入れ態勢を整えていくのかは手探り状態でしたが、事業承継時に1人で抱え込んでうまくいかなかった経験を生かし、現場に相談し、任せる経営に舵を切ったことが奏功しました。
実際に入出荷や梱包などの庫内作業の人員として受け入れてみると国籍のハードルは思ったよりも高くなかったことがわかります。国籍よりも目の前の仕事に取り組む姿勢のほうが大切だったのです。特に大きな問題が起きるわけでもなく、むしろ戦力として日本人と同じように働いてくれることを実感し、現場でも外国人材への見方が変わっていきました。
技能実習生の監理団体とも相談しながら庫内作業用の表記を翻訳したり、プライベートや社員同士の細かいトラブルを含めた生活相談にも乗ったりするなどフォロー体制も構築。現在、経営理念や行動指針、ミッション・ビジョン・バリューの刷新・啓蒙を図っているところですが、その中のバリューにも「多様性を生かす」という項目を入れ、人手不足を補うためだけの外国人雇用ではない、広義の人材活用策を考えています。
障害者の雇用、性的マイノリティの方、シニアの方などにもすそ野を広げながら、上位役職のレイヤーから理解促進を進め、多様性に関する解像度を上げて社内全体で多角的に理解を深めていきたい。私の経営テーマは社長就任以来変わらず「人」です。社員を大切にして、それに共感した人にこんな会社で働きたいと思ってもらえるような会社にする。そのためにこれからも持続可能な会社を目指して舵取りをしていきたいと思います。
(構成/岸のぞみ)株式会社河野 ホームぺージ YouTube Instagram










