竹重文貴

31歳のとき、医療従事者を中心としたコミュニティBARを立ち上げました。

幼い頃から「自分ではない誰かの人生」に興味があり、公園で知らない子にも話しかけて仲良く遊ぶような子どもでした。「なぜこの子はこの公園で遊んでいるんだろう」と考えながら、その背景を含めて人を好きになっていたのです。いろいろなことに興味を持ち、バスケットボールや空手、ピアノなど一通り経験したのち、佐賀西高校に進学。医療の世界に興味があったものの血が苦手だったので医師や獣医師は目指せず、「薬剤師は安定した仕事」だと母が言っていたこともあって「親孝行ができれば」との思いから薬剤師を目指しました。

高校卒業後、福岡大学薬学部に進学。薬学部には薬学部インターンシップ制度があり、長めの休みを見つけては全国の薬局を転々としました。在学中の6年間で100社以上見学に行きましたが、その中で大賀薬局の大賀崇浩副社長(現・代表取締役社長)に出会いました。それまでにたくさんの薬局関係者とお会いしていましたが、大賀さんは圧倒的に話が面白い! 業界の把握と業界に求められていることの言語化がうまく、話を聞けば聞くほど強い納得感があるのです。味わったことのない高揚感とともに「こんな人が働いている会社ってどんな会社だろう!」と興味を持ち、「この人が描くビジョンをいちばん近くで見ていたい。ここで働きたい!」と思うようになりました。募集要項も給料も見ずに入社を決めたのです。

入社後、大分や福岡など全部で6店舗を経験しましたが、実は入社したのは2020年のコロナ禍。同じ患者さんのご自宅を訪問する医療従事者は医師、看護師、薬剤師、理学療法士、介護福祉士などたくさんいるのに、同じ時間帯に訪問することができませんでした。多職種連携と言いながら同業者に会う機会すらなかったのです。

一方薬剤師は薬剤師で普段は薬局にこもりきりで孤独。同業者との情報交換のチャンスはほとんどありません。カフェを併設している薬局もありましたが、平日はみんな働いており、休みの日には仕事関係の場には出入りしません。でも「夜は飲みに行く人がいるのではないか」「平日の夜の時間を利用して、何かいろんな人の話を聞くための受け皿を作ることはできないか」と考えるようになりました。

そんなとき、新しいビジネスを提案できる「チャレンジ制度」という社内制度を利用し、「医療従事者同士がコミュニケーションの取れる場所としてのコミュニティBAR」構想について役員にプレゼン。経営のことなどはよくわからなかったので数字について何も書かずに提出したらあっさり却下されてしまいましたが、諦めずに「医療従事者を支える会社としてコミュニティBARを運営することは理念に一致するはずだ」と説得を続けました。結果、「一度形にしてみよう」と何とか承諾を得ることができたのです。

2025年2月25日、福岡市営地下鉄中洲川端駅からほど近い飲食店街の一角に、医療従事者を中心としたコミュニティBAR「MEDs(メッズ)」はオープンしました。82.5㎡の敷地にカウンター6席とテーブル2席の計6卓。現役の医療従事者34名がシフト制でBARに立ち、20時から翌3時まで営業しています。毎日大盛況というわけにはいきませんが、平日は約15名、金曜や土曜はもう少し多くの方にご来店いただき、「医療者が医療者の味方になれる場所」として機能しています。

客単価がなかなか上がらないといった運営上の問題や「本業に専念すべきではないか」といった否定的なご意見をいただくこともありますが、「すごくいい場所ですね」とお声がけいただくことも多く、SNSや口コミで広がった会員も2200名を突破しました。医療従事者と同伴であれば一般の方でも入店できるようにしたり、店内では医療指導などは行わず、あくまで交流にフォーカスするよう周知したりしながら制度も整えていきました。最近ではバーカウンターの中にSponsor(スポンサー)ボードという協賛パネルを作り、関係各社の営業代行・採用や販売促進のお手伝いも始めています。

まだまだ課題も多いですし、ゆっくり育てているところではありますが、軌道に乗れば全国に展開していくのも面白いのではないかと思っています。地域医療に対して奉仕していくという中核にある精神を忘れないようにしながら、フランチャイズ展開なども視野に、これからも挑戦を続けていきます。

(構成/岸のぞみ)

大賀薬局グループ 株式会社オーガーデン ホームぺージ

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