『名もなきヒーローを繋いでいく』後藤学　株式会社Helte 代表取締役社長

2016年、株式会社Helte（ヘルテ）を立ち上げ、「アクティブシニア層の日本人」と「世界で日本語を学んでいる人たち」をマッチングするプラットフォーム『Sail（セイル）』を始動させました。

その原点は母子家庭で育った幼少期にあります。母は世界中を飛び回るフリーランスのカメラマン。学校行事に来てもらえないなんて当たり前、時には半年もの長期にわたって家を空けるなんてこともありました。1人の時間を埋めるようにスケジュールされた数多くの習い事。幼少期、僕は言い知れぬ寂しさと劣等感の中で過ごしました。でも母が旅先から送ってくれる絵葉書、持ち帰る不可思議なお土産の数々は、僕にまだ見ぬ世界を教えてくれた。その原体験が、学生時代の僕を海外へと誘いました。

国際関係学部に進み、大学4年間で30カ国以上を旅した僕が最も印象的だった国は、約1年間滞在することになったインドでした。茶色い水、安定しない電気、押し寄せるイナゴの大群。日本では違法となるような薬物を摂取しながら、愛とセックスに生きるヒッピーたち。驚きの連続だった寮生活も、3カ月経てば既に日常。
電気が止まれば静かに部屋に戻ってろうそくをつけ、夜空の月を見上げます。そんな生活の中で、いまだになくならない差別や快適とはほど遠い生活、さまざまな不条理の中でしたたかに生きる人々の姿に心打たれ、自分がどれほど恵まれていたのかを知ることができました。海外を知ることで日本が好きになり、そして日本を愛してくれる人たちの架け橋になりたいと思えるようになった。そう思えたとき、ずっと拭えずにいた劣等感や焦燥感が消えていくのを感じました。

「ヘルテ」はデンマーク語で、夢や希望を与える人、ヒーローを意味します。戦闘服を着たり空を飛んだりしない、世界中で出会った名もなき人々。不条理の中で強かに生きる、僕だけのヒーロー。彼らに勇気をもらってここまでこられた。だから自分もそうありたい。誰かのヒーローを繋いでいきたい。社会や環境に変化を期待するのではなく、自分自身がその変化の一端となりたい。これからもそんな変化を実現するサービスを生み出していきたいと考えています。