水野さんショート

40歳のとき、当時所属していた芸能事務所を辞めて、フリーランスとして活動していくことを決めました。

小・中学生の子役時代を経て、大学卒業後に本格的に俳優業をスタート。20代は舞台を中心に活動し、30歳からは芸能事務所に所属して映像の仕事に移っていきました。しかし、思うような結果を残せず、何かと言い訳を見つけて腐っていきそうだった。
「このままではダメだ! 結果がどうであろうと、全部自分で責任を負いたい」
そう考えて、40歳で事務所を辞めることを決意。

フリーなので、営業活動もギャラの交渉もすべて自分の仕事。プロフィールを持って制作会社やテレビ局を回りましたが、事務所制度が当たり前の日本の芸能界ではそんなにうまくいくはずがありません。
ある事務所のマネージャーとエレベーターで2人きりになったときに、こんな言葉を投げつけられたこともあります。
「あんたレベルの役者がテレビ局に来ても、仕事はとれないよ」
それでも私は、諦めませんでした。

大きな転機となったのは、2013年にフジテレビで放送されたドラマ『カラマーゾフの兄弟』に出演できたこと。当時の私にとっては大きな役で、何より現在のトレードマークになっている「作業服」の役をはじめて演じた記念すべき作品です。
そこから少しずつ業界で知ってもらえるようになり、NHKの大河ドラマ『麒麟がくる』や映画『翔んで埼玉』など、数多くの映像作品に出演させていただけるようになりました。断然多いのが工場長の役で、作業服を着せたら日本一だと自負しています(笑)。

これまでに困難も多々ありましたが、フリーランスとして私が役者を続けていられるのは、私のことを気にかけ、起用し続けてくださった関係者の皆さまの温情があったからです。フリーランスとして直接関係者の方とお話しするようになって、「出会い」の大切さを改めて実感しています。

自分自身で営業し、仕事がくるもこないも、すべて自分の責任。そう思えるいまの環境が自分には合っているし、フリーになる決断は正しかったと思っています。

2021年には「Emmu(エンム)」という集団を結成しました。
「役者は舞台や映画、ドラマの本番前だけでなく、常に稽古するべき」
その信念のもと、私のマンションで5人の役者を集めて稽古をしたのがスタートで、いまでは20人以上の役者やモデルが稽古に参加しています。稽古にはキャスティング会社の方や、ドラマの監督が見学に来てくださることもあります。このようなスタイルを確立できたのも、フリーランスとしての活動で得られたご縁があったからこそ。
今後は、私自身が役者として成長していくとともに、Emmuという、事務所でも劇団でもない「フリーな集団」の可能性も模索していきたいです。

(写真/ドラマ『紅さすライフ』より)

水野智則 Twitter
Emmu ホームページ

2023年7月24日(月)24:59スタート
日本テレビ系 シンドラ『紅さすライフ』出演。

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