井上さんショート

32歳で娘を出産後、3カ月で職場に復帰することを決めました。

お金の面から人の人生に影響を与えられる仕事に魅力を感じ、新卒で銀行に就職。個人営業の部署で資産コンサルティングを担当してきました。

31歳で妊娠が分かったとき、先生から予定日は1月だと告げられました。4月から保育園に預けるには、産後3カ月で入園するか、1年3カ月で入園するかになります。
「仕事が好きで、キャリアを途切れさせたくない」
その思いが強く、夫とも話し合い、産後3カ月から保育園に入れられるよう出産前から保育園探しを始めました。チェック項目を作っていくつも見学し、「ここなら大丈夫」と思えた保育園を申請し、何とか希望の保育園に預けられることになりました。

しかし、保育園は決まったものの、出産後の母体はフラフラでした。「痛みもとれないこんな状態で、職場復帰なんてできるのだろうか」「仕事と育児の両立以前に、私の心身は大丈夫だろうか」と、どんどん不安が募っていきました。
まずは母子ともに健康でなければ実現しないと思いました。健康でいるためには睡眠がいちばん大切。私自身が連続で7時間以上眠ること、そのためには娘が連続で7時間半以上眠ること。これを職場復帰までの目標とし、「ねんトレ」(ねんねトレーニング)に励みました。

4月にならし保育がスタート。もしここで子どもに泣かれたら罪悪感が大きくなったかもしれませんが、まだ人見知りする前だったので、娘は泣くこともなく楽しそうにしていました。「まだ寝がえりさえ打てない赤ちゃんを保育園に預けて大丈夫だろうか」と最初は心配でしたが、実際に預けてみると、むしろプロが一緒に育児をしてくれることに安心感を得ることができました。

仕事ではブランクが短かったこともあり、上司から課長の昇進試験を勧めてもらい、復帰から1年未満で課長に昇進しました。子どもがいる女性でも課長になれることを後輩に見せられたのはとても良かったと思います。

職場復帰後は大変なことも多かったですが、私自身はこの決断にまったく後悔はありません。私は24時間子どもと向き合うよりも仕事をしながら育児をする方が向いていたのだと思います。限られた時間だからこそ、娘と向き合う時間は全集中できました。
子どもが生まれたら多くのことを諦めなければならないと思っていましたが、自分が希望を持って努力すれば、将来への希望や可能性を狭めることはないんだなと実感しています。
保育園からはじめて呼び出しを受けたのは、復帰後8カ月以上が経ってからでした。子どもの健康にも救われました。

保育園以外にも民間のベビーシッターのサービスなども活用しました。「自立」とは、誰にも頼らず1人で生きていけることではなく、頼れる先を増やすこと。1人で頑張らずに周囲を頼ることが、仕事や育児、人生そのものを楽しむコツだと思います。

(撮影/Yayoi Hori)

井上愛 note

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