榎本淳子さん

アルコール・飲料メーカーグループの健康食品会社 ビジネスデザイナー
榎本淳子さん

仕事が好きだったから、「暮らすように」働いていた。そんな榎本淳子(エノジュン)さんの体に、あるとき異変が起こる。膵臓に腫瘍が見つかり、「一時は死も覚悟した」という。大病を経て、自らの環境を変えようと考えたエノジュンさんは、新卒から13年間働いたリクルートを離れることを決意。第2回では、病気発覚から闘病生活、決断に至るまでの心境の変化を追う。
 新卒でリクルートに入社し、広告の制作ディレクターから少しずつ業務領域を広げていったエノジュンさん。2018年に地方創生をテーマにした新規事業の部署が立ち上がると同時に、自ら手を挙げ、マネージャーになった。当時のメンバーは10人。

 「人を育成するのは得意ではないかもしれませんが、人の得意なことを引き出して導くのは好き。それぞれの強みを掛け合わせながら仕事をすることで、メンバーの意識が変わっていくのを見られたときはうれしかったですね。新規事業の部署なので、最初は本当に何もない状態で、組織のビジョンを作るところから始めました。大変だったけれど、面白かったです。私にとってはとても大きな経験になりました」

 当時、同じ部署で一緒に働いていた元同僚の市川大記さんは、エノジュンさんについて次のように語る。

 「熱量と行動量がすごく大きい人だな、というのが最初の印象でした。常に小さな主語で話し、遠くにいる誰かではなく、身の回りの人をより良くするにはどうすればいいかを考えている人です。部署を立ち上げたばかりで、売り上げもないしお客様もいない。新しい事業を作った経験もない中で、半年くらいで道筋をつけなければならなかった。リーダーである彼女のプレッシャーはものすごく大きかったと思います。僕も含めて、みんな120%くらいのパワーで仕事をしていました。2年間でしたが、1つの時代を一緒に走った感覚があります」(市川さん)

 エノジュンさんはどんなマネージャーだったのだろうか。
 「きちんと自分の言葉で話し、方針を示すので、メンバーから信頼を得ていましたね。共感型のリーダーで、自然と彼女を支えようという雰囲気になるんです。だから、強い組織になっていました」(市川さん)

現在はベルフェイス株式会社で働く、元同僚の市川大記さん。エノジュンさんには「強い組織をつくる才能がある」と話す


 ゼロからビジネスを生み出す毎日は充実していたが、多忙を極めた。新規事業の部署の立ち上げから1年が経った2019年4月、エノジュンさんの体に異変が起こる。

何軒も病院を回り、ようやく原因がわかった

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