「これまで実家を出たことがない」「東京に行くなど考えたことがない」「あそこはスラム街だ」「怖い」
視野がアリンコのように狭かった私に、無常にも一日で決断を迫ってくる養成所。寝耳に水の出来事の中、私は勢いで上京を選んでしまったのです。親に伝えた直後、自分の部屋にこもり、寂しさで枕をびしょびしょに濡らすという矛盾を抱えて……。
結果的に、東京に出てきた私は、酸いも甘いも知り、自分の価値観を理解でき、多くの大切な出会いにも恵まれました。演劇や表現への多岐に渡る挑戦もできた。札幌で鬱々としていた自分に言ってやりたい。「あなた、東京に出てきてほんと良かったよ」と。
(写真/保坂萌)