
私の決断は、重機ファンダムを事業化するため、サステナビリティ本部に売り込むと決めたことです。
小学生の頃は絵を描くのが好きな子どもでした。みんなと違うことがやりたいという気持ちがあり、中高の吹奏楽部では金管楽器のユーフォニアムを担当、大学は早稲田大学理工学部に進学しました。卒業後は大学院で遺伝子組み換えなどの研究に没頭。微生物を培養して数千できるコロニーの中から当たりを探す地道な作業は楽しく、放線菌に関する研究成果から2つ論文を書き、充実した楽しい大学院生活を送りました。
就職活動では、合同説明会の日立建機ブースの前で人事の人と目が合いました。会社説明会を聞き、展示されていたショベルカーの絵を描くと「上手!」と褒められ、「工場見学においで」と言われて「面白そう」と参加しているうちに、いつの間にか日立建機に入社していました(笑)。入社後はデータ分析関連の部署へ。少人数チームで細かい作業が多い分析の仕事は大好きで楽しく、部品データ分析をできるようなBI(ビジネスインテリジェンス)ツールの開発・導入を担当するなど新しいことに挑戦させてくれる部署の気風も気に入っていました。
その後、経営企画部に異動し中期経営計画の策定などを担当。そんな中で、「ブルドーザーや油圧ショベルといった重機のファンクラブをテーマにビジコンに応募したい」と言っていた課長の話に興味を持ち、2022年度に社内で開催されたビジネスコンテストに参加。100チームの中から審査を経た20チームが本審査へ。全従業員がオンライン配信で見守る中、プレゼンを経て、審査員特別賞を受賞。そこから半年間の課題検証期間に入りました。応援してくれていた同僚や、知人・友人など口コミで人脈を広げ、重機ファンへの取材を開始。重機ファンや重機オペレーターの現状や課題について調査していきました。
2024年3月に最終審査をクリアし、その後新事業創生ユニットへ異動。1年かけて事業化を目指す最終検証のタームに突入しました。5月末には展示会に出展し、重機のミニチュアを買いに来た人たちに「重機のファンクラブを作りたいです!」とお声掛け。3日間で200名の方と名刺交換をすることができました。翌6月にはどれぐらいの集客力があるのか試すため、コレクション持ち込み可の重機ファンのオフ会を開催。目標20人に対して79名が集まり、大変な賑わいとなりました。
2024年11月に立ち上がったコミュニティサイトでは、100名ほどの人たちが参加してくれました。ところがその頃、会社からは「会社が求める新たな事業の柱となりうる事業規模に到達できるイメージがわかない」として、新規事業として認められない方向であることがわかりました。新たな事業の柱を作りたい会社側と「採用に役立つ」「ユーザーや現場から生の声が届く」「法務やDXにも熱心な重機ファンがいてエンゲージメント上がっている」という非財務価値に重きを置く私たちとで、考え方をすり合わせることができなかったのです。
「引き受けてくれる部署が見つからず、活動が終わるかもしれない」と落ち込んで泣く私に、さまざまな人が「新規事業でだめならブランドの部署に話をしてみては」と言ってくれました。でも私は、「日立建機が一番」という世界観を広めたいのではなく、重機ファンを増やし、重機を扱う仕事に携わりたいという人を増やしたいだけ。この工事現場の最年少は70代という声も聞きました。重機ファンへのインタビューを通じて「このままだと水道から水が出なくなる!」という危機感を抱いていました。そして、この事業に価値を見出してくれるのはESGを管轄するサステナビリティ本部しかいない! そう確信したのです。
はじめに提案したときは「なんでうちが?」とピンと来ない様子でしたが、廊下で趣味の話をしたりして、あの手この手で仲良くなり、インフラを支える重要性、重機ファンダムの社会的意義について繰り返し説得を続けた結果、翌4月には「この事業を引き受けるとしたらうちかも」という言葉を引き出すことに成功。6月には正式にサステナビリティ本部へ。会社のホームページに、ようやく「重機ファンダムの登録はこちら」というリンクが開通しました。現在会員は1861名まで拡大。2025年6月の展示会で重機ファンダムを日立建機として続けられるようになったことを報告し、業界団体へ働きかけ、建設機械の日(11月19日「いい重機」の日)として記念日も登録。2年間で70回以上もイベントを開催するなど、活動を続けています。
その後、重機ファンダムの人たちがテレビ番組に出てくれたり、他業種から重機オペレーターになってくれたり、うれしい変化が生まれつつあります。それでもまだ「この仕事で働き続けることに希望が持てない」「仕事がつらい」という人々もいて、業界の課題解決はまだまだこれから。少しずつファンダムを育てながら、今後もこれらの課題に向き合っていきたいと思います。
※猿山未華さんはNTT西日本株式会社が開催した「越境人材」を発掘・称賛する表彰制度「Japan E-1グランプリ 2025」において、審査員特別賞の1つである「わたしの決断物語賞」を受賞されました。
(構成/岸のぞみ)重機ファンダム 紹介ページ










