さちショート

32歳から5年間続けてきた不妊治療。10回以上、人工授精をしても妊娠せず、37歳で体外受精に踏み切りました。期待を込めて挑んだものの、1回目は着床に至らず。体外受精でもダメなら、どうなるんだろう……と絶望的な気持ちになりました。何か決定的な原因があるわけでもない。「あなたには無理ですよ」と言ってもらえたほうが、よほどラクになれる。誰かに決めてほしくて、「先生だったらどうしますか?」と半ば詰め寄るように担当医に聞くと、「諦められないなら、何度でもやります」と。私に共感してくれるでもなく、当たり前のことを言われて悔しかった。そりゃそうですよね、みんなそうです。

でも、まだ完全に心は折れていませんでした。2020年3月に2回目の採卵。しかし、コロナ禍になったこともあり、なかなか移植する覚悟が決まりませんでした。8月にようやく覚悟を決めて病院へ。これでダメなら、違う生き方もあるだろうと思いました。このままダラダラ体外受精に高額のお金を費やすほうが、きっと後で後悔する。5年も頑張ってきたので、やり切った、という思いもありました。

結果的に、私は2度目の移植で妊娠することができました。翌年5月に男児を出産。長い長い不妊治療を思い返すと、今でも涙が出ます。こんなに理由もわからず、うまくいかないことは人生ではじめての経験でした。だけど、つらい経験の末に、産まれてきてくれた子どもが、いま本当にかわいい。そう思えるだけでも、苦労は無駄じゃなかったのかな、と思っています。

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