高杉さんショート

結婚を機に「働き方を変えよう」と考え、病院勤務を辞めてフリーランスの助産師へ。2023年に産後ママのケアを行う「助産師サロン」を立ち上げました。

5人兄弟の長女として生まれ、大家族の中で弟たちの面倒を見て育ったこともあり、人の世話をするのが好きで、将来は医療に携わりたいと考えるようになりました。当時、頑張れば4年間で看護師、助産師、保健師の資格が取得できると知り、大分県の大学に進学。勉強する中で、「NICU(新生児集中治療室)で働きたい」と、目標が明確になっていきました。

卒業後は大分県内の総合病院に就職し、NICUや産科で働きました。お産はタイミングをコントロールすることはできないため、24時間働き続けたこともありますし、体重300gほどの小さな赤ちゃんのお産に立ち会ったこともあります。出生前診断を受けるかどうか迷ったり、検査でお腹の子どもに障がいがあるとわかって悩んだりするパパ・ママのケアもしていました。とてもやりがいのある仕事でしたが、一方で独身だからできた働き方だったと思います。

転機が訪れたのは34歳のとき。結婚して上京することになったのです。東京の無痛分娩を専門とするクリニックで働き始めたものの、病院勤務の働き方には迷いがありました。

――常勤だとこれまでと同じ働き方になってしまう。この先、出産しても仕事ができるような働き方をしたい。

そう考え、病院勤務を辞めてフリーランスとして活動することを決めました。

フリーになってからは、子育てアプリで育児に関する記事を書いたり、記事や動画などメディアの監修をしたりする仕事のほか、世田谷区の「ネウボラ・チーム(※)」が立ち上がったタイミングでメンバーに加わり、非常勤職員として妊婦さんやママたちの相談業務も始めました。病院勤務の頃に比べて仕事の幅が広がり、助産師の仕事の可能性を実感しました。

2児を出産し、いまは育児をしながら働いていますが、働き方を変えたからこそ仕事を続けることができています。
そして、2023年には助産師仲間と2人で起業に踏み切りました。出産を機に働き方を変える必要が出てくるのは、助産師も同じです。育児中であっても、助産師として活躍できる場を作りたい。また、妊娠・出産のタイミングだけでなく、女性の一生に寄り添いたいと考え、まずは産前・産後のママのケアをメインに、品川区で「助産師サロン」を立ち上げ運営しています。

助産師サロンでは、産後ママの授乳の練習や育児相談のほか、ママ同志でランチを食べたり、ゆっくり休息をとったりすることもできます。誰もが最初ははじめての育児で、出産後すぐに母親になれるわけではありません。母になる過程をゆっくり見守るような存在になりたいと思っています。

今後は事業の幅を広げて、助産師が日替わりでそれぞれの強みを生かして働けるようなサロンにしていきたい。また、各分野の専門家とも連携し、地域のママたちが子育てに関するさまざまな相談ができるような場所にもしていきたいと考えています。「いつでもいろんな人につながっていける助産師」を目指していきます。

※「ネウボラ」とはフィンランド語で「相談・アドバイスの場所」。フィンランドでは、妊娠期から就学前までかかりつけの専門職(助産師または保健師)により、継続的に母子とその家族の相談・支援が行われている。

(構成/尾越まり恵)

助産師サロン ホームページ
取材協力した映画『渇愛の果て、』は、出生前診断・妊娠・出産・障がいに対するさまざまな考えや選択肢を提示している。
『渇愛の果て、』
新宿K’s cinema にて5月18日(土)~5月24日(金)連日12:15より、大阪・シアターセブンにて6月1日(土)~6月7日(金)ほか全国順次公開
出演:有田あん、山岡竜弘、輝有子、辻凪子
監督・脚本・プロデュース:有田あん
監修医:洞下由記 取材協力:高杉絵理(助産師サロン)
撮影:鈴木雅也 編集:日暮謙
音楽:多田羅幸宏(ブリキオーケストラ)
配給協力:神原健太朗
配給:野生児童
©野生児童
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