藤木屋ショート

大学卒業後、大手アパレルのレナウンで働いていました。当時、新宿伊勢丹のメンズ館といえば花形の売り場です。多くのお客様でにぎわっていましたが、リーマン・ショックで一転、閑古鳥が鳴く状態に。ただ、そんな不景気の中でも、中華系のお客様がちらほらメンズのスーツを買ってくれることに気づいたのです。まだ「爆買い」や「インバウンド」といった言葉もなかった時代。中国語を勉強したら、もっとアパレル販売に役立つのでは? と考えました。

しかし、そのとき私は29歳。社会に出て7年以上が経ち、今さら学校に通って若い子たちに混ざって勉強することには抵抗もありました。結婚して落ち着くべきなのではないか。お金もそんなにないし……。悩んだものの、ワーキングホリデービザを活用して2010年に思い切って台湾に渡りました。

いざ行ってみると、同じクラスの6人中、2人は同じ年で1人は年上。何かを始めるのに年齢は関係ないと悟りました。学校で勉強しながら、旅行会社の現地法人でアルバイトをしたり、台湾人のおじさんと歴史について語り合ったり、1年半の台湾生活はとても貴重な時間となりました。自分が「外国人になる」という経験は、見える世界や価値観を広げてくれます。そして、帰国後、男着物専門店「藤木屋」を開業する共同創業者と出会ったのも、台湾でした。あのとき台湾に行っていなければ、いまの自分はありません。


男着物 藤木屋 ホームページ
男着物 藤木屋 Instagram
男着物 藤木屋 facebook

おすすめの記事