翔 初美

わたしの決断は、「ありのままの自分を見せる」と決めたことです。

実家がお寺の隣にあったことや、祖母が茶道や華道を教えていたこともあって、昔から心や目に見えないものに興味があり、それらを感じ取る能力が人より優れていたわたし。一方、左手と両足の指の一部が生まれつきの奇形だったこともあって無意識に指を隠すクセがあり、「人と違うことが恥ずかしい」「人と違うから受け入れてもらえない」といつもどこかで感じ、無口でしゃべらない子どもとして生きてきました。

中学に入ると、アメリカ人の女の子が1週間ホームステイで家にやってきました。言葉が通じなくても言葉を超えたコミュニケーションで対話できたことで自分の世界が広がり、20歳でアメリカへ。学校卒業後、そのままアメリカに移り住みました。その間、一度本帰国して日本に戻った際に逆カルチャーショックで精神を病んだわたしは、再びアメリカに戻り、呼吸法やエネルギーワーク等のワークショップ、イベントに参加しながら自分と向き合う日々を過ごしました。その間、自身で学んだことを知人に教えてほしいと言われるようになりましたが、それを広く普及させていこうとは思えませんでした。他人に理解されるとはどうしても思えなかったのです。自己探求の旅はその後、20年近くに及びました。

そんな中、世界はコロナ禍へ突入。当時暮らしていたアメリカのデトロイト周辺はロックダウンし、お店も入店制限がかかって出歩くのも難しくなり、人々はまさにピリピリモード。自宅では24時間家族と一緒の時間を過ごす必要があり、精神的にもどん底に突き落とされました。そんなとき、ふとSNSを見ていると、Facebookのライブ配信のノウハウを教えてくれる10日間のオンライン講座の広告が流れてきました。人前で話すのは以前から苦手だったわたしですが、なぜかこの時、直感的に「やってみよう」と思い立ち、講座に申し込んだのでした。

Facebookのライブ配信で15~30分ほど、毎回のテーマに合わせてライブ配信を実際にやってみるというその講座は、人前で話せないわたしにとっては人生最大の壁であり、本当に苦しい経験でした。でも実際に自分の過去の話を全世界に向けて配信していると、「見えないものを感じ取る能力が人より優れている」というわたしの特性を聞いたリスナーさんたちの中に「いいな、わたしもそうなりたい!」「わたしもその能力を持ちたい!」と言ってくれる人が現れ始め、わたしはそのことに衝撃を受けました。人と違うことは「恥ずかしい」と思ってきた自分の価値観が覆された瞬間でした。2021年、春のことです。

以来、それまでは知人にしか公開していなかったエネルギーワークのワークショップなども広く一般に公開し、オンライン講座や個人セッションも展開。今後は講師育成にも力を入れていく予定です。

「自分を隠すこと」の象徴でもあった指の奇形も気にならなくなり、五体満足でも人と違うことに悩んでいる人がたくさんいることにも気が付きました。何十年もの間「自分探し」をしていたわたしですが、そんなわたしの経験や技術を伝えていくことで「人生が変わった」「こんな自分になれた」という感謝の言葉をたくさんいただくことができました。自分の数十年の葛藤さえ人の役に立てるとわかって、わたしはそのためにこんな回り道をしてきたんだなと思うことができました。

わたしの左手の中指、薬指は人よりかなり短いですが、「日本人の女性の指は何㎝から何㎝まで」と決まっているわけではありません。「指が短い」=「十分でない」と感じてきたわたしですが、人の見た目は人それぞれ。指の長さなんて決まっていません。わたしは生まれたままで十分だったんだ、とようやく思うことができたのは、あのときライブ配信でありのままの自分をさらけ出すことができたから。そして、三本脚でわたしの元に来てくれた我が家の愛犬のおかげです。これからは同じように悩む人たちに、国籍も人種も文化も関係なく、どんな命も尊い命なんだよと伝えていくことが使命だと信じ、実現していきたいと思います。

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