大畑さんショート

2015年、ストレートネック(本来あるべき首の骨のカーブが少なくなり、首に負担がかかった状態)による肩こりに悩んでいた私は、自ら枕を開発し事業化することを決断しました。

工業高校を卒業後、日立製作所に入社。工場の製造ラインで働いていたのですが、「自分で事業をしてみたい」と考え、22歳で起業。化粧品の卸・販売やエステサロン運営など、美容関係の事業を始めました。実は、高校時代からファンデーションやパック、香水などの化粧品に興味があったのです。当時、美容に携わる男性は少なく、周囲からは珍しがられましたが、この業界に思い切って飛び込むことにしました。

2011年には45歳でネイリストの資格を取得。48歳のときには美容を教えるスクールを立ち上げました。しかし、この頃から強い肩こり、首こりに悩まされるようになります。 ネイルは前傾姿勢で細かい作業のため、首や肩、腰がバキバキに凝るのです。整体やマッサージに行っても、一時的にしか改善されません。枕を変えることが1つの解決策になると知り、ストレートネックを改善するため、首を支える枕を探してみたのですが、なかなか自分に合う枕が見つかりません。タオルを巻いて枕にするといいという情報を見つけてトライしてみたのですが、寝ている間に型崩れしてしまいました。

――世の中にないなら、自分で作ればいい!

工業高校時代に培ったものづくりのスキルを生かし、型崩れせず、高さと硬さ、形状を調節できるタオル枕の製作に挑戦することにしました。試行錯誤の結果、タオルの中に木の棒を入れ、その本数によって硬さの調節ができ、タオルのロールによって1cm単位で高さと形状の調節ができる枕が完成。この枕を使って寝てみたところ、1カ月ほどでこれまでの肩こりが嘘のように解消しました。

肩こりに悩む多くの人に使ってもらいたいと考え、すぐに特許を申請。しかし、これまで自分で製品を作り、販売した経験はありません。売れるかどうかの保証もない。このままビジネスにするべきか悩み、世の中の反応を確かめるために、クラウドファンディングに挑戦。その結果、50万円の目標金額に対して、121%で達成。「肩こりが改善した」「ぜひ製品化してほしい」という声に後押しされ、事業化を決意しました。

日立市が運営する創業支援施設を縫製の場所として利用して、「コリ吉(コリヨシ)ロール」を製品化。自社ECサイトのほか、Amazon、楽天での販売をスタート。最初は知名度がないためになかなか売れず苦労しましたが、地道にブランディングに取り組んでいくことで、少しずつ知ってもらえるようになりました。そして、2020年以降のコロナ禍が追い風となり、ECで買い物をする人が増えたのと同時に、テレワークによる肩こりに悩む人からの注文が増えました。

繰り返しになりますが、「コリ吉ロール」は、体の状態によって、毎日高さや硬さ、形状を変えることができる枕です。また、タオル生地なので丸洗いができ、出張などでも荷物にならずに持ち運ぶことができます。
「20年以上悩んでいた肩こりがラクになった」「寝起きがスッキリした」といったレビューを見ると、本当にこの枕を作って良かったなと思います。
大きな目標ではありますが、世の中から「首こり」や「肩こり」をなくしたい。人生の約3分の1を占めると言われる睡眠が快適なものになるように、枕難民で困っている人を1人でも多く救えるように、これからも1人ひとりに大事にコリ吉ロールを届けていきたいと思っています。

(構成/尾越まり恵)

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