2億8000万円の負債を抱えたことをきっかけとして出会った人脈の中で、55歳のときに未経験のスタートアップに飛び込むことを決めました。
デザイン系の専門学校を卒業したのち、建設会社に就職。総務や営業事務、設計など幅広く携わっていましたが、2年後に結婚が決まり、夫の転勤を機に退職。東京へと移り住みました。翌年第1子を出産。そこからは通信教育の添削講師などで在宅仕事を続けながら3人の子どもたちを育てていきました。
子育てが一段落した頃、飲食店のパートタイマーなどから仕事をステップアップさせていき、38歳のときに化学薬品会社の正社員登用が決まりました。受発注の事務作業から始めて、営業事務やチラシ制作など、さまざまな仕事を経験しました。
一方プライベートでは子ども3人分の教育費に3900万円かかっており、老後資金が不安になり不動産投資を考えるようになりました。私たち夫婦は、ロバート・キヨサキさんのベストセラー書籍『金持ち父さん貧乏父さん』(筑摩書房)を読んだこともあり、不動産投資のセミナーに通うなど、勉強を開始。2億8000万円でマンションを購入し、49戸の賃料で老後の資金を賄っていくことを決めました。ところが3カ月後、賃料が振り込まれなくなる事態が発生。実はこの頃流行していた不動産投資詐欺の一種に引っかかってしまったことが判明しました。
物件を購入したときは銀行の担当者も不動産会社の担当者も「なんていい人たちなんだろう。本当に物件を買ってよかった!」と思っていたのに、実は不動産の価値は1億円もなく売りにも出せない状況であり、賃料も事前に聞いていたよりもかなり低いことがわかりました。詐欺だと知ったとき、あまりのことに人生で初めて体が震えたことをよく覚えています。
自己破産も覚悟する中、お世話になっていた弁護士さんの紹介でSI被害弁護団という被害者団体に加入することができました。その団体を支援していたのが一般社団法人ReBORNsで、この一般社団法人の代表こそが、現在私が務めるAgent Connectの代表取締役社長だったのです。
代表の冨谷皐介(とみたに・こうすけ)は金融事件史上最大規模と言われたスルガ銀行の不正融資事件「かぼちゃの馬車事件」の被害者であり、同じような被害者を救いたいという思いでこの一般社団法人を立ち上げていました。仕事を続けながら被害者の会に所属し、スルガ銀行との交渉を団体で進めるといった被害回復活動を続ける中で、2022年頃に代表より「現在運営しているYouTubeを手伝ってくれないか」と打診があり、私もメンバーに立候補しました。それからはじめて冨谷と話をし、消費者被害に関する情報発信を目的としている「ガルスTV」のお手伝いを開始しました。30名ほどの被害者の会で構成されるYouTube運営チームとともに現在に至るまでに200~300本の動画公開を手掛けてきましたが、その過程で冨谷にスカウトされ、転職を決めました。
2023年のAgent Connect設立時には、不動産営業とエンドユーザーをつなぐプラットフォームの運営を手掛ける事業内容や日本の不動産取引における不動産事業者とユーザーの情報格差、そしてそこから生まれる不動産取引への後悔や不満といった課題を解決したいという企業理念を知り、深く共感していました。
とはいえ、当時勤めていた化学薬品会社はすでに17年間も勤務しており、定年後も働いてほしいと言われていました。私はいまの会社に携わるうえで必要になるであろうシステム関連も触ったことがありませんし、AIの最新技術についても知りません。おまけにAgent Connectはこれまで経験したことのない業界のスタートアップで、私の年齢はこのとき55歳。転職すべきかはかなり悩みました。しかし冨谷もまた大企業を辞めて被害者のために一般社団法人を立ち上げた人物です。
――この人の誘いを断ったら、私は自分を許せない!
やらない後悔よりもやる後悔だと信じ、一歩踏み出すことを決めました。現在は公式LINEを立ち上げるなど、広報・PR業務を中心に携わっています。日々力不足を感じますが、さまざまなことを提案・挑戦できるのでやりがいもあり、後悔はまったくありません。
今後は今の事業並びに会社を軌道に乗せ、たくさんの方に知っていただくことで、不動産で失敗する人を1人でも減らしていきたい。事業を通じてより多くの人生を救っていけたらと思っています。
Agent Connect株式会社 ホームぺージ