佐藤康平


2021年11月、精神的に悩みを抱えている人たちのためのポップアップカフェ、「Non-Alcohol BarうつCAFE」をオープンしました。完全予約制で、月1回、都内並びに神奈川県内で開催しています。1ドリンク+テーブルチャージで1600円。お客様は、さまざまな病気を抱える方や仕事に行けずに困っている方、学生、その支援者たちです。1600円を払うことに不安を感じる方には割引価格の200円でドリンクを提供しています。

うつカフェをオープンしたのは、僕自身がうつ病で苦しんだ経験があったから。それは僕にとって、大きな挫折の日々でした。

新卒で官公庁へ。しかし公務員特有の世界観や閉鎖的な空気がどうしても肌に合わず、入社3カ月ですでに食事が喉を通らなくなっていました。栄養補助食品を無理やり流し込んでも吐き戻してしまう日々。胃腸の調子がおかしいのだろうと胃腸内科を受診したところ、精神科を紹介されました。診断は、適応障害。入職半年足らずで退職することとなり、僕にとってそれは、憧れの場所、望んだはずの人生からの転落を意味していました。強い劣等感に襲われた僕は、「すぐに次の仕事を見つけなければ!」と焦って就職活動を開始。しかし病状も安定しない混迷の中にあってうまくいこうはずもありません。

「どうして前の職場を辞められたんですか?」

毎度問われるその質問は、僕の心を黒く染めていきました。履歴書が汚れてしまったんだと思い込むようになり、うつ状態は悪化。記憶も曖昧になり、気が付けば川にいて入水自殺を試みるような毎日でした。

そんなある日、このままではいけないと心配した家族から、宮古島でのリゾートバイトを打診されました。僕は「きれいな海で死ねるならそれもいいか」と宮古島行きを了承。しかしその沖縄でのあたたかな日々が、「本当にやりたかったこと」を思い出させてくれました。僕は公務員になりたかったわけではなく、誰かを助ける仕事がしたかったんだ――。

リゾートバイトから戻り、コミュニティカフェを作ろうと決意。120万円の資金を工面し、仕組みを整え、オープンまでこぎつけました。1日に20名ほどのお客様が来てくださいますが、これがビジネスとして成功すれば今度はここでアルバイトの採用もできるかもしれない。自分の考えが実現でき、それが社会貢献に変わっていく。あの苦しい日々を経て、いまようやく自分らしく人生を生きることができていると感じます。


元うつ病バーテンダーこへちゃん 公式Twitter

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