天野さんショート

還暦を迎えるにあたり、友人や家族と踊るダンスイベントを開催しました。

自分の「還暦」を意識し始めたのは、40代後半の頃です。facebookに流れてくる先輩女性たちの還暦の投稿を見ていると、「子どもたちがお祝いしてくれました!」「社員たちがサプライズで祝ってくれました!」と、どれも楽しそう。私はといえば、既婚ですが子どもはいない。起業はしたけれど、社員はいない。夫はイベントやセレモニーといった類にはまったく興味がなく、これまで誕生日を祝ってくれたこともなければ、ましてやサプライズなんて1度もしてもらったことがありません。「私は還暦を迎えても何もないな……」と考えるようになったのです。

だったら、自分で祝えばいい!
自らダンスイベントを企画し、過去に浅草サンバカーニバルに出場したダンス仲間たちや、87歳になる母と妹2人、姪っ子と一緒に踊ることにしました。最年長の出演者はなんと90歳です。

そもそも、小学生のときに家の向かいの公民館で、妹2人と一緒にバトントワリング教室に通ったことが私とダンスとの出会いです。習い事といえば習字やそろばんが主流だった時代に、バトンをする3姉妹は珍しかったと思います。あとで聞いた話ですが、「姉妹が同じ習い事をして、共通の思い出を持っていれば、大人になってからもつながれる」と母は考えていたようです。

そんな母の願いが叶い、最後に3人で出演した発表会から37 年の時を経て、3姉妹がまた一緒に踊ることに。ブランクが嘘のように、3人の息はぴったり合いました。

2022年9月、東京都北区の赤羽会館の大ホールで、24人のダンサーが観客120人の前でダンスを披露。私はこの企画を考えたときから、「出演者と来場者からは1円も受け取らない」と決めていました。東京藝術大学の「I LOVE YOU」プロジェクトに採択され、その助成金の20万円を使いましたが、会場、音響、撮影などを合わせると、費用は豪華クルーズ船旅行に行けるくらいの金額になりました。それでも私は生きたお金の使い道だったと思っています。

これから、私のように子どもを持たずに還暦を迎える人が増えていくと思います。
「私はどうせ誰にも祝ってもらえない」としょんぼりするのではなく、「自分で祝えばいいんだよ!」というメッセージを伝えたかった。
60歳はただの通過点。これからもっと、好きなことをして生きていきます。

(写真 @2022 RockziU)
天野暢子 Twitter

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