𠮷本亮

非正規雇用から初めて正社員になったのは57歳のときのことでしたが、正社員になったいまも変わらず、人生のいちばん大切なことは「自分が楽しいと思うこと」。趣味の自転車やマラソンの時間を大切にするため、働き方を柔軟に選んできました。

昔から機械いじりが好きで、プラモデルやラジコンづくりが得意でした。高校では模型部の部長としてクルマの模型製作に没頭。一方、乗り物も好きで、特に自転車は高校2年生で日本一周をして以来その魅力にハマり、高校3年生で出場した自転車レースでは3回出場して3回とも優勝するほどの実力がありました。

家庭の事情で大学進学は見込めなかったこともあり、高校卒業後は競技用自転車を製造する会社に入社。溶接工のアルバイトとして6年間働きながら、月に1回ほどはアマチュアの自転車レースに出場していました。その後、資金が貯まったタイミングで早稲田大学を受験し、進学。誘われるまま教育学部博士課程を修了しました。

再び社会に出てからは、法律事務所のSE(システムエンジニア)や大学講師、教科書づくり、雑誌記事やテレビ番組の制作などいろいろな仕事をしながら働きましたが、こだわってきたのは「趣味の時間を作れる働き方」を選べること。勤務先にはいつも「たくさん休むよ」と言ってきました。

30~40代からは自転車仲間に誘われて始めたマラソンにも没頭。毎年9月はイタリアで長距離山岳マラソンがあり、1周350㎞の登山道を約1週間かけて踏破する大会にも出場しているため、年に2回は2週間ほどの長期休暇を取得します。それ以外にも国内大会に出場するついでに観光にも出かけているため、2~3カ月に一度1週間程度の休暇も取得します。

マラソンは本気で走ることもあれば宿泊用のリュックを背負うなどの負荷をかけて走ったり、制限時間に余裕のある大会では鉄板と肉を担いで焼いて食べながら走ったりすることも。そうやって興味のあること、楽しいことを突き詰めて生きてきたら、仕事の強みもいつの間にかできていました。機械好きが高じて、まだ日本でコンピューターが当たり前ではなかった30年前からマッキントッシュを使ってエクセルやフォトショップなどを使いこなしてきましたし、マラソン大会で世界30カ国ほどを巡る間に英語、イタリア語、ドイツ語などもマスターしました。自分でできることは何でも自分でやる主義なので、髪の毛も40年前からずっと自分でカットしています。

そうこうしていると、派遣社員として勤務していた八千代エンジニヤリングから、「正社員で働かないか」とお声がけをいただくこともできました。得意分野を発揮できる職場であり、雇用形態にこだわっていたわけではなかったので、「これまで通りの働き方ができるなら」と快諾。現在は海外事業部で海外に渡航する人々の書類作成やエクセル勉強会の講師などを務めています。

もちろんいまでも年に2度は休暇を取得しますし、週末に大会があるときは前後2日ほどお休みをいただき、これまで通りの生活を継続。年齢も働き方も雇用形態も全然気にしないでいられたのは、自分の強みがあったから。自信を持って自分を貫いていたら「なんで正社員で働かないの」「いつになったら結婚するの」と聞いてくる人もいなくなりました。

「人生は楽しんでなんぼ!」というのが私の第一信条。これからも周囲に流されることなく、「好き」と「楽しい」を貫いていきたいと思います。

(構成/岸 のぞみ)


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