小沢さんショート

20代後半に2人の子どもを出産。仕事と育児の両立に悩んだ結果、俳優業から一時離れ、育児に専念することを決めました。

物心ついたときからずっと、女優への憧れがありました。子どもの頃からテレビドラマはほとんど見ていたと思います。高校生になるとアルバイトで貯めたお金で月に1回地元熊本から深夜バスで大阪に通い、演技スクールで勉強を始めました。「夢に少し近づいた」と思いました。

東京の大学に進学してモデル事務所に所属。ドラマや映画のオーディションを受け始めました。大きなチャンスをつかんだのは、19歳のとき。奥田瑛二さんの初監督作品『少女~an adolescent』の主役に抜擢していただいたのです。
人生ではじめての演技なので、下手なのは当たり前。気持ちでは負けないよう必死に奥田監督にくらいついていきました。奥田監督は人にも作品にも愛情深い方です。苦しい日々の中でも多くを学び、「演技って楽しい!」と思いました。
この映画は世界的にも評価され、右も左も分からないまま、海外の映画祭にも出席。私にとっては奇跡のような時間でした。

その後、本格的に俳優業に力を入れ始めたのですが、芸能の世界はそんなに甘くないと思い知ります。思うような活動ができないままモヤモヤする日々が続きました。
私生活でも大きな変化があり、20代半ばで結婚後、2人の子どもを出産しました。子どもを産んでも女優業は続けられると思っていましたが、親族が近くにいるわけではなく、周囲のサポートを得づらいワンオペの状態で育児と俳優業を両立するのは至難の業でした。
しばらくは頑張ってオーディションを受けたりもしていましたが、オーディションのたびに子どもをどこかに預けなければならない。あるとき、マネージャーに「もしオーディションでこの役が決まったらできる?」と聞かれて、「あ、できないかもしれないな」と思い、子どもが大きくなるまで俳優業を休むことを決めました。

10年ほど休み、そろそろ復帰したいと思っていたところでコロナ禍になりました。40代になるタイミングでもあり、「これからは自分のやりたいことをやろう」と考え、俳優業への復帰と、憧れていた映画のプロデュースにも挑戦することにしました。中編映画『夜のスカート』と、今年12月に上映される『ホゾを咬む』は、プロデュースのみでなく、俳優として出演もしました。今後もプロデュースと俳優の両方で活動していきたいと考えています。

振り返ってみて、20代後半から30代の時期にしかできない表現もあったので、俳優業を休んだのはとても残念だったなという思いはあります。一方で、育児に没頭した時期は楽しかったですし、その経験があったからいまの自分があるので、決断は間違っていなかったと思っています。

映画やドラマなど映像業界で働くスタッフは圧倒的に男性が多く、まだまだ女性が仕事と育児を両立できる環境が整っていません。そのため、出産を機に自分の好きな仕事から離れてしまったり、仕事のために結婚や出産を諦めたりする女性もいます。自分自身の経験をもとに、これからは子どもを持つ女性が映像の現場で長く働き続けられるような仕組みづくりにも携わっていきたいと思っています。

『ホゾを咬む』12月2日 新宿 K’s cinemaほか全国順次公開
脚本・監督・編集:髙橋栄一
プロデューサー:小沢まゆ
出演:ミネオショウ 小沢まゆ 木村知貴 河屋秀俊
製作・配給:second cocoon
Ⓒ2023 second cocoon
ホゾを咬む 公式ホームページ

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