大和さんショート

30歳のとき、お掃除アイドルユニット「東京CLEAR’S」からの卒業を決めました。

21歳で地元大阪から上京。2年ほどアルバイトをしながら生活をしていたある日、友達に「3人で活動していたアイドルグループの1人が脱退したから、一緒にやらない?」と誘われました。
小学生のときSPEEDに憧れてダンスを習ってはいましたが、当時の私はお芝居に興味がありました。でも、芸能の仕事に近づけるならやってみようと軽いノリでアイドル活動を始めました。

「アイドル」と言ってもメジャーデビューしているわけではなく、いわゆる「地下アイドル」です。東京都内の小さなクラブハウスで、たった5cmほどの高さのステージに立って歌って踊り、お客さんは3人(苦笑)。収入は、お客さんと一緒に撮るチェキ代1000円、といったアイドル生活でした。
趣味の延長のような活動でしたが、それでも私は必死だったんです。23歳でアルバイトしかしていない焦りがあったため、たとえお金にならなくても、芸能の仕事で日々を埋めていける。それが何かにつながるかもしれない、と思っていました。

それから2年ほど経って、当時すでに解散していたお掃除ユニット「東京CLEAR’S」の元メンバー2人と私たち3人が合体して東京CLEAR’Sを再結成する話が持ち上がりました。それからあれよあれよという間に大手芸能事務所からメジャーデビュー。
「CLEAR’S」は東京以外にもフランチャイズ方式で数を増やし、全国70人くらいのアイドルグループになりました。お掃除好きアイドルとしてお掃除検定を取得し、清掃ボランティアをしながら、ライブで全国を回る日々。1年のうち350日は全国を回りライブをするような生活で、とにかく忙しかったのですが、東京CLEAR’Sの活動を応援してくれ、全国のライブについて来てくれるファンのみんながいてくれたことが、頑張る原動力になっていました。かつて3人しかいなかったお客さんが、数百人にまで増えたんです! また、ハロウィンの後の渋谷を清掃するなど、お掃除アイドルとしての活動にも私たちは誇りを持っていました。メンバーが仲が良く、地方ライブの後にみんなで飲みに行ったりする楽しみもありました。

そんなアイドル活動に終止符が打たれたのは、再結成から5年後。その1年前に私を誘ってくれたリーダーが卒業を発表。リーダー不在で続けられるのか、残ったメンバーで話し合い、1年間は頑張ったのですが、最終的に解散することを決めました。「やり切った」という思いが強かったのです。

卒業後は念願だったカンボジアに行き、2カ月間滞在。その後、結婚・出産を経て、いまは郊外で子育てをしています。
子どもの頃から私は集団行動が苦手で学校にも馴染めなかったのですが、東京CREAR’Sの活動を通してはじめて集団行動を経験し、みんなで1つのことを成し遂げる喜びを知ることができました。いまでもアイドル時代を思い出し、時々家の近くでゴミ拾いをすることもあります。東京CLEAR’Sのメンバーと、ファンの皆さんと一緒に駆け抜けた約5年の濃密な時間は、私の人生にとってずっと大切な宝物です。

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