田中さんショート

2024年の夏、東北芸術工科大学の「ツリーハウスプロジェクト」のリーダーとして、メンバーと一緒にツリーハウス「くるみ」を作りました。

中学校の美術で建物を作る授業があり、すごく楽しかったんです。それをきっかけに建築に興味を持ちました。
高校時代には地球環境に関するニュースがよく耳に入ってくるようになり、「どうすれば建築から環境問題にアプローチできるんだろう?」と考えるようになりました。

いろいろと調べていたときに見つけたのが、山形市にある東北芸術工科大学です。環境性能に優れた建築物の研究が進んでいることを知り、進学を決めました。
大学1年生のときは授業とサークル活動だけの大学生活でしたが、同級生たちが校内のプロジェクトや校外活動をしているのを見て、何だか置いていかれているような気持ちに。そこで、2年生のときに「ツリーハウスプロジェクト」に参加することを決めました。ツリーハウスとは、生きている木に取り付いて作られた建築物や工作物のことで、地面に定着していないため、建築基準法では一般に建築物として扱われません。

東北芸術工科大学のツリーハウスプロジェクトは、東日本大震災が起こった2011年に、学生たちに元気を出してもらいたいという教員の呼びかけから始まり、授業ではイメージすることしかできない建築物を、学生たちが主体となって、地域の人たちと交流しながら実際に作り上げていくものです。もともと工作が好きなので、「楽しそうだな」と思いました。

最近では、3年生が主導して敷地を選定し、どんなツリーハウスを作るのかを考えます。2024年は3年生となった僕たちの代の番となり、先輩からリーダーに任命された僕がチームをまとめることになりました。

4月からみんなでコンセプトを考えて図面を描き、8月からの夏休み期間に施工しました。プロジェクト参加者は1年生から3年生まで全部で25人。今年は大学の先輩が働いている会社が経営する蔵王(ざおう)の「UNITECAFE(ユニテカフェ)」にツリーハウスを建てることが決まり、グループにわかれてアイデアを出し合いました。

樹氷や温泉で有名な蔵王は、冬場はスキー客で賑わうのですが、夏場は観光客が少なくなるため、夏場の蔵王を少しでも盛り上げられたらいいな、という思いもありました。

製作場所として選んだのは、広大なカフェの庭にある、どんぐりの実が成るエゴノキ。カフェで購入したコーヒーやスイーツをツリーハウスの中で楽しんでもらいたい、というコンセプトで、ツリーハウスの外周にぐるっとカウンターのテーブルを設計しました。カフェの雰囲気を壊さないよう、デザインもシンプルにしました。
名前の「くるみ」には、カフェのおすすめメニューの「くるみアイス」と、「人が木のまわりをくるむような家」という意味を込めました。

実際に建ててみると、図面通りにはいかないところも出てきます。例えば、ツリーハウスの床を支えるための「方杖(ほうづえ)」を最初は4本で設計していたのですが、建ててみるとグラグラして支えきれず、急遽木材を追加発注し8本に変更しました。

10日間の施工期間を経て、無事に完成! 学校の授業では模型までしか作れないので、設計から施工までのプロセスを経て、完成した瞬間は「できたー!!」と、とても感動しました。座ってみて見下ろす眺めは、すごく気持ちよかったです。お披露目イベントには20人ほどが来てくれて、とても好評でした。

建築は図面を描くだけではなくて、木材の調達や施工など、多くの人の力があってはじめてできることだと、このプロジェクトを通して学ぶことができました。

これから就職活動が始まります。大手建設会社かハウスメーカーか、あるいは個人の建築事務所か、まだ進路を絞り切れていませんが、将来は人の暮らしに一番近い、家の建築に携わりたいと思っています。

(構成/尾越まり恵)

東北芸術工科大学ツリーハウスプロジェクト Instagram

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