須合さんショート

45歳のとき、未経験からワインの醸造に挑戦することを決めました。

パート社員として働いていた飲食店で、ワイナリー設立の新規事業が立ち上がったのが2016年。
「でも、やる人がまだ決まっていないんだよね……」
そう話す上司に、気が付いたらこう言っていました。
「それなら、私がやりたいです!」
何だか楽しそう、という直感だけがありました。

岩手県で生まれ育ち、就職を機に東京へ。結婚後は夫の家業である中華料理店で長く接客業を続けてきました。お店を閉めることになり、ママさんバレーの友人から紹介された飲食店でパートの仕事を始めたところでした。

新規事業に手を挙げたものの、ワインの知識はゼロ。醸造なんて未知の世界です。
当時高校生だった次男に聞かれました。
「ママはワインのこと知ってるの?」
「ううん、知らない。いまはね」

やりたい気持ちと、自分にできるだろうか……という不安とのせめぎ合い。それから1カ月くらいは悩んだと思います。
「どうする? 本当にやる?」と上司に聞かれるたびに、「もうちょっと考えさせてください」と答えていました。
それでも最終的にやってみようと決断したのは、正社員となり大好きな仲間たちともっと深く一緒に働きたいと思ったからです。厳しい道だとしても、私は1人じゃないと思えたから前に進むことができました。

1年間、山梨県のワイナリーに通ってゼロからワインの作り方を学び、醸造免許を取得。2017年に東京・御徒町に小さな都市型ワイナリー「葡蔵人~BookRoad~(ブックロード)」をオープンしました。
私自身が未経験からワインの世界に入ったからこそ、ワインのハードルをもっと下げたい、もっと身近に感じてほしいと思っています。

まさか、自分がワインを作るなんて、想像もしていなかった。でも、あのとき踏み出さなかったら出会えなかった世界を、この6年間でたくさん経験することができました。 当時の私にもし声をかけるなら、「やってみたら?」と言うでしょう。
わからないからやらない、できないからやらないのではなく、まずはやってみて、ダメだったらチューニングしていけばいい。

もっと若く始めていたら……と考えることもありますが、そうすると子どもはまだ小さかった。何かをするのに、遅すぎることも早すぎることもない。思い立ったときがタイミングなのだと思います。

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