山古志住民会議 代表 竹内春華

山古志住民会議 代表 竹内春華さん

2021年、新潟県山古志(やまこし)村の復興を担う住民グループ「山古志住民会議」の代表になった竹内春華さん。リアル村民と村外に住みながら山古志に共感する人々を結ぶ「仮想山古志村プロジェクト」をけん引し、NFT(非代替性トークン)を発行。世界初の試みが大きな注目を集めた。後編では仮想山古志村プロジェクトの成果と、村民ではない竹内さんがなぜ山古志村で活動を続けるのか、その思いをひも解いていく。

消滅か存続か、最新技術を活用して世界に問う

 2007年に震災復興をサポートする生活支援相談員として山古志村で働き始めた竹内春華さん。自治体の制度が変わっていく中で職域も変化し、2021年には山を下りるかとどまるかの選択を迫られた。

 「絶対に山を下りたくない」
 その強い思いで、竹内さんは山古志村に事務職員として残った。隣接する魚沼市旧広神村で生まれ育ち、現在は長岡市の和島で暮らす竹内さんを山古志にとどまらせた思いとは、何だったのか。

 「2007年から山古志村で働き始め、震災直後の皆さんの弱音や隠したい部分も見せてもらいました。そこまで信頼してもらったからにはこの村をより良くしたいという思いがまず1つです。
 また、プライベートでは30代で結婚・出産し、ライフステージが変化するタイミングに山古志村の皆さんに助けていただきました。1人の人間として育てていただいたなという思いがあります。

 震災を機にやむを得ず山を去って行った人もいます。でも、そんな人たちも山古志の一員なんですよね。よそ者の私が残り続けて、しかも住民会議の代表になることで、山古志にはそういう度量があることを伝えられるし、去って行った人たちの思いを引き継ぐことになるのではないかと思ったんです」

 2021年4月に山古志住民会議の代表となった竹内さん。住民会議が主体となり、仮想山古志村プロジェクトとしてニシキゴイをモチーフにした「NishikigoiNFT」の発行が決まった。NFTとは、ブロックチェーンの仕組みを使って改ざんできない唯一の証明書を発行できる技術だ。この機能を利用して、発行するNFTにデジタル住民票の意味合いを持たせた。
 存続か消滅か。山古志村の価値を真正面から問う挑戦だった。

NFT

山古志村では古くから養鯉(ようり)が盛ん。ニシキゴイをモチーフにした第1弾セールのデジタルアートはアーティストのOkazzさんが手がけた


デジタル村民の数がリアル村民を超えた

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