2023年に入社2カ月で越境活動を開始し、半年後には若手交流会イベントを主催した森川裕介氏。翌2024年、新たに始まったE-1グランプリでは企画運営に携わりながらイベント当日のトークセッションにも登壇。さらに自らもE-1グランプリの応募者として敢闘賞を受賞した。大学時代から越境活動に興味を持ってさまざまな活動に取り組んできた森川氏は社内外のさまざまなイベントを主催しながら、「やる気さえあれば誰もが自由に挑戦できる機会の創出」に尽力している。

人に負けないために、独自路線を行く!
学生時代から越境活動を開始

――まずは現在の業務内容についてお聞かせください。

森川裕介氏(以下、森川氏):学校法人や大企業向けにセキュリティやクラウド、Wi-Fi、サイネージなど、ネットワークに関するさまざまなソリューションを提案するSE(システムエンジニア)として勤務しています。

――越境活動を始めようと思ったきっかけはどこにあったのでしょうか?

森川氏:幼少期から負けず嫌いな性格で、人に負けないためには独自路線に走ればいいんだと学生時代に気が付きました。

そこからいろいろな活動に興味を持つようになり、同志社大学商学部でマーケティングや経営学などを学びながら、アルバイトではユニクロの販売員に加えてユニバーサル・スタジオ・ジャパンでキャストとして勤務。大学4年生のときには長期インターンシップを利用して、ビジネスニュースメディア「NewsPicks」のマーケティング担当として働きました。学生の頃から越境活動は始まっていたんです。

――そこからNTT西日本へ。入社後の越境活動はどのように始まったのでしょうか。

森川氏:就職先にNTT西日本を選んだのは、通信がさまざまなサービスの根幹をつなぎ支えるものであると思ったからで、「人と違う存在でありたい」というアイデンティティはNTT西日本のような伝統的な日本企業でこそ生かせるのではないかと感じたためでした。

ところが入社後すぐ、「この会社選択で間違っていなかったのか」不安になりましたね。初期配属された部署は大学時代に自分が働いてきたNewsPicksの文化とあまりにも違ったため、戸惑ったのです。NewsPicksは「WILL(意志)」を強く持ち、自分のやりたいことが明確にある人ばかりの集団です。一方、NTT西日本はどちらかといえば日々組織の一員として業務をこなすことに主眼を置いた人たちが多いイメージを受けました。どちらが正解というわけではないですが、この文化の違いが不安の源泉でした。

そんな中、NTT西日本が運営するオープンイノベーション施設「QUINTBRIDGE(クイントブリッジ)」でアントレプレナーシップ(起業家精神)の醸成に関するイベントが開催されることをQUINTBRIDGE会員向けメールマガジンで読み、入社2カ月後の6月に参加しました。そこではさまざまな方が登壇して講演されていたのですが、その中で現在社内のダブルワークの制度でお世話になっている及部さんがアントレプレナーシップに対する考え方やこれまでのキャリアについて講演されていました。

お話を聞く中で「まさにこの人を目指したかったんだ!」と感動し、自然と涙が込み上げてきました。「こんな人もいるんだ!」と勇気をもらい、講演終了後すぐに及部さんに話を聞きに行きました。その後「NTT-West Youth 」というNTT西日本を活性化させるための若手の有志団体があることを教えていただき、参加することにしたのです。

NTT-West Youthは、「社内外の人たちとの出会い」「新しいスキルとの出会い」「新しい取り組みとの出会い」の3点を軸に、NTT西日本グループの若手社員向けにキャリア育成や社内外交流イベントなど各種プログラムを開催している団体で、このNTT-West Youthへの所属が入社後の越境活動の始まりとなりました。

入社1年目から各種イベントを開催
E-1グランプリの運営にも携わる

――その後、どのように越境活動を進めていったのでしょうか。

森川氏:イベントに参加するうちに、自分でもイベントを企画したいと考えるようになりました。はじめに企画したのは、自分のやりたいことを見つけるための若手交流会です。NTT西日本のパラレルキャリアを歩んだ及部さんと、NewsPickSを運営する株式会社ユーザベースの2年目で人事を担当する若手社員によるトークセッションや参加者自身の価値観、過去の経験を棚卸するワークショップを組み合わせたイベントで、社会人1年目の2024年1月、30名規模のイベントを開催しました。

その後も2024年だけで社内イベントを2回、社外の方も巻き込んだイベントを2回開催。2025年6月にはAIを「知っている」だけでなく、実際に「使える!」ようになることを目指す場所として「関西AIキャンパス」を運営メンバーとして立ち上げ、月に1回QUINTBRIDGEで「ゆるっとAIミートアップ」というイベントを開催するようになりました。

一方、2年目から参加することのできる社内ダブルワーク制度を利用し、2024年秋からダブルワークも開始。NewsPicksと連携した、情報収集・発信力を高める研修の実施やQUINTBRIDGEのゼミ活動の1つとして、大阪府枚方市にあるテーマパーク「ひらかたパーク」の企業課題を解決するプログラムを企画・運営してきました。時を同じくして、E-1グランプリの企画が新しく立ち上がり、その運営にも携わることになったのです。

表彰はどのように行うか、評価基準をどうするかといったグランプリの枠組みから当日の運営まで、及部さんたち運営メンバーとともに手探りでつくっていきました。イベント当日はオンラインを含めて300名以上の方が参加する大規模なイベントだったので緊張感もありましたし、運営をしながらトークセッションにも登壇していたので、当日はバタバタでしたね。

――越境活動を進めるうえで最も苦労したのはどのような点でしたか。

森川氏:まだ誰も実施したことがないイベントだったので、E-1グランプリの運営は何から何まで手探り状態。何が正解かわからない中で進めていくのは大変なことでした。そもそも募集をかけて応募が集まるのかどうか、それすらもわからず応募者を確認するまでは不安ばかりでした。

しかし総務人事部の中だけでなく、越境活動をしている社員の方々に告知イベントに登壇してもらったり、総務人事部長の梶原さんにもご協力いただいたり、いろんな方を巻き込みながら、スピード感を持って取り組むことができました。立ち止まりそうになることもありましたが「それでもやるんだ!」と強い意志を持って進められたことも良かったなと思います。

イベントでは審査員が審査している間にトークセッションを開催しており、僕はそのファシリテーターを担当していたのですが、審査が終わるまでトークセッションを続けなければいけなかったので、「もう少し話を引き延ばして!」「そろそろ限界です!」とチャットでやりとりしながら場をつなぎ、時間調整をしながら進行するのも大変な仕事でした。

森川さん中面

E-1グランプリのトークセッションに登壇する森川裕介氏(写真左)。NTT西日本株式会社 エンタープライズビジネス営業部 N&S部門 N&S推進担当。2023年にNTT西日本に入社。2024年度越境グランプリにて敢闘賞を受賞した


「努力」は「夢中」に勝てない
夢中になれることが、強みになる

――実際に越境活動に挑戦してみてご自身の中で何か変化はありましたか。

森川氏:ひらかたパークの課題解決実践ゼミでは、ひらかたパークの課題の1つである「新たな顧客体験の構築」を実現するため、京阪電気鉄道株式会社やGROOVE X 株式会社と共創し、2日間のイベントを開催しました。

GROOVE Xが提供する家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」を連れて、「スカイウォーカー」「ノームトレイン」といったアトラクションに一緒に乗車できる体験やLOVOTのファッションショーなどを企画し、2日間でのべ600人のLOVOTオーナーの皆様が全国から集まり、大熱狂なイベントを開催できました。

このイベントの運営を通じて、ゆるがないコンセプトの確立がイベント成功のカギだと学びました。明確なコンセプトに基づき「お互いの共通利益を発見する」ことが重要であり、それによって、関わる企業での合意形成がスムーズになり、協力し合える持続可能な関係性を築けると実感しました。

本業でも取引のある協力企業の方々にはそれぞれの考えがあり、それを理解しお互いが納得できる形で進めていくこと、または考えを発言できる環境をつくることを意識し取り組んでいきたいと思っています。

――最後に越境活動を始めてみたいと考えている人たちへのメッセージをお願いいたします。

森川氏:僕は「努力は夢中に勝てない」という言葉が好きなんです。我を忘れてできることは誰にでもあると思っていて、それはそのままその人の強みになると思うんです。人より秀でていることではなくて、人より夢中になれること。それを探すためにも越境活動は必要だと思います。はじめの一歩は勇気がいると思いますが、自分にとって少し難しそうだと思うことがいちばん経験になりますし、学びもたくさんあります。

いろんなことを経験する中で夢中になれることを見つけることができるはずです。ぜひいろんなことにチャレンジしてほしいと思います。

Q.越境活動、ひとこと失敗談 

A.1度開催したことがあるイベントのオンライン交流会を企画したことがあるのですが、募集期間が短かったこともあり、誰も参加者が集まらずに中止になってしまいました。

Q. 越境活動で出会ったおもしろいこと、もの、ひと 

A.LOVOTとの出会いは大きかったですね。「人の代わりに仕事をし、生産性を上げるテクノロジー」ではなく、「人の心を満たし、人を直接幸せにするテクノロジー」としての存在という考えは、僕のこれまでのロボットに対する常識を変え、とても刺激になりました。

Q. 越境活動でNGにしたアイデア 

A.お酒を飲めない人の「お酒を飲めないことがわからず、飲まなくていい言い訳が欲しい」「飲み会は好きだが損した気分になる」という悩みに対して解決するドリンクを作るというアイデアは面白いと思いましたが、まだ実現できていません。例えばぶどうジュースがボトルキープできたり、1500円のスペシャルドリンクがあったりなど、お酒好きも頼みたくなるドリンクがあればよいと考えています。ソフトドリンクという名称も新しくし、既存のイメージを変えたいですね。「お酒が飲めない人も心の底から楽しめる飲み会」の実現に向けて画策中です。

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