上原さんショート

48歳のときに金融と心理学と掛け合わせた「ファイナンシャル・セラピー」をもとにした資産形成サポートの事業を始めました。

銀行員で倹約家の父親の元で育ち、食事の席では、預金や金利、税制優遇制度のことが話題にのぼるのが普通の家庭でした。そんな環境で私も自然とお金や経済について興味を持つようになりました。

一方で、英語が好きで海外への憧れも強かったため、大阪外国語大学(現在は大阪大学に統合)に進学。ところが、入学直後に父が病気で急逝し、金銭面の問題から大学中退の危機に陥ってしまいます。
専業主婦だった母が「せっかく入った大学だから、何としてでも卒業させたい!」と、はじめて就職し、私自身も奨学金をもらいながらアルバイトをしたものの、家計は赤字でした。そこで母はリスクを覚悟で、父が残してくれたお金を元手に金融商品を購入。その運用益を仕送りに充ててくれたことで、私は無事に大学を卒業することができました。

卒業後、最初のキャリアに選んだのは日立建機の海外営業職。海外出張も多く充実した日々を過ごし、20代後半でイギリスの石油会社に転職。オイルトレーディング部に配属されました。為替のように石油の価格も日々動き、それを売り買いする人たちがいる。石油王についてもたびたび話題にのぼり、「こういう世界もあるのだな」ととても興味深く、自分自身も自社株を購入して投資デビューを果たし、金融への興味が高まっていきました。

金融商品についてより深く知るために外資系投資銀行に転職。そこから17年間、JPモルガンやドイツ銀行などで金利・債券トレーディング部のリスク管理などに携わり、とても楽しくも多忙な日々を過ごしました。ところが、ハードワークがたたり、体調を壊してしまい、ドクターストップがかかってしまったのです。

仕事から離れ、療養しながら心理学やマーケティングなどを学び、この先の働き方を模索。その中で、これまで培ってきた金融のスキルと心理学を掛け合わせた資産形成のサポートを思いつきました。投資をするにも、心が安定していなければうまくいかないと考えたのです。しかし、周囲からは「何を言ってるかわからない……」と不評でした。

風向きが変わったのは「老後2000万円問題」が話題になったことです。人々の投資への関心が高まったタイミングで、ストアカというスキルシェアサービスで「iDeCoのはじめ方」講座を細々と始めました。
そして2021年、アメリカで注目を集めている「ファイナンシャル・セラピー」(金融心理学)という考え方を知ります。お金との付き合い方は、幼少期の体験や記憶に起因していることが多いと言われています。ファイナンシャル・セラピーとは、心理学に基づき、自分のお金の使い方の癖や価値観と向き合い、健全なお金との付き合い方につなげていくセラピーの新領域です。

すぐにファイナンシャル・セラピーの体験講座をスタートしたところ、あっという間に2カ月先まで満席になり、関心の高さに驚きました。
いまは行政や大学から受託してセミナーを実施しながら、個人セミナーも不定期で開催しています。
今年、NISAの法改正が行われたことで投資を始めた人が増えました。一方で、運用に対する不安など、新たな悩みも生まれています。

多くの人が、「どの商品を買えば、損をすることなく資産を増やせるのかを教えてほしい」と望んでいます。しかし、まずは自分のライフプランやマネープランを考え、自分に合った投資スタイルを見つけることが重要です。そうすれば、自分に合った投資商品を自分で選べるようになります。
将来が不透明で不安の多い時代ですが、為替や株価といった自分でコントロールできないものに捕らわれることなく、本当にほしい未来とは何なのかをしっかり見据えて、わくわくしながら未来に対して準備をしてほしい。全力でそのサポートをしていきたいと考えています。

(構成/尾越まり恵)

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