NTTフィールドテクノで通信インフラの修理・メンテナンス業務を担当する片江俊介氏。社歴が長くなり担当業務の幅が広がったことから、社内ダブルワークで業務ツールの改善に取り組んだ。その後、佐賀大学主催のDX(デジタルトランスフォーメーション)プログラムにも参加し、生成AIやデータ分析などの知識を習得。学んだ知識をもとに、現場の生産性向上に貢献した。

チームの生産性を高めたい
社内ダブルワークで業務改善に挑戦

――まずはこれまでのキャリアと現在の業務内容についてお聞かせください。

片江俊介氏(以下、片江氏):短大を卒業後、農業機械メーカーを経て、2019年4月にNTTフィールドテクノに入社しました。入社してから2025年の6月までは佐賀県内の個人・法人に対して電話やインターネットの故障修理、メンテナンスを担当してきました。また、街の中のマンホールやケーブルの保守、電話局内の修理なども対応していました。

2025年7月から長崎県の対馬センターに異動。大きな業務内容は変わりませんが、離島なので、スマートフォンの電波塔のメンテナンスなど、NTTドコモやNTTデータといったグループ会社からの委託業務が増えました。専門知識が必要な分野なので、学んだことがダイレクトに業務に生かせることにやりがいを感じています。何よりも、きちんと対応すればお客様に喜んでもらえて、直接感謝の言葉をいただけることが嬉しいですね。

――越境活動を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

片江氏:私の最初の越境活動は、本業とは別の部署の仕事を労働時間の20%以内で兼務できる「社内ダブルワーク」です。現場でずっと故障修理を担当してきましたが、社歴が長くなるにつれて、チーム全体のマネジメントを任されるようになりました。現場の社員は修理の対応件数などの目標数字を持っており、チーム1人1人が生産性を高め、目標を達成するためのサポートを求められるようになったのです。

マネジメント業務はそれまで経験したことがなく、どうしたら良いか悩んでいたときに、ちょうど社内ダブルワークの案内が届いたんです。ダブルワークを公募している部署のリストの中に、本社の業務ツールを主管する部署があり、業務効率化や生産性向上について勉強できるチャンスだと考え、手を挙げました。

――ダブルワーク先の部署ではどのような業務を担当されたのでしょうか。

片江氏:2024年1月から3月までの3カ月間、現場で使う業務ツールの改善検討を担当しました。実際にツールを活用する立場としての意見や、佐賀のメンバーから吸い上げた改善点を本社メンバーに伝えることができました。基本的には業務はオンラインで進めましたが、本社に行く機会もありました。最初は本社というだけで委縮しましたし、求められるレベルは高いなと感じました。でも、とても刺激的で勉強になりました。やはり違う業種の人と話すことで見えてくるものがあります。3カ月の任務が終了した後は、部門長に成果を発表しました。

社内ダブルワークを経験したことで視野が広がり、他の部署の事例から佐賀に取り入れられることはないかと考えられるようになりました。ただ、自分にはデータ分析などのITの知識がないな、と気付いたんです。

そこで、佐賀大学が主催する「Sagallege DX リスキルプログラム」に応募することにしました。文部科学省の補助事業に採択されたプログラムで、佐賀県内で働くビジネスパーソンを対象にDXの基礎を学び、組織のDX化を推進する研修プログラムです。

佐賀大学取材の研修プログラムに参加
視野が広がり仕事が楽しくなった

――佐賀大学のプログラムでは具体的にどのようなことを学んだのでしょうか。

片江氏:2024年6月からの半年間のプログラムで、約10講座に出席しました。平日はみんな仕事があるので、研修は土日に行われます。期間中は土日のほとんどをこの研修に費やしていましたが、自分で希望して参加したので、苦にはならなかったですね。最初の2~3回は座学で、残りは生成AIやRPA(Robotic Process Automation)などそれぞれテーマがあり、実際にプログラムを組んでみるなどハンズオンの研修でした。

印象的だったのが、日本マイクロソフトの社員の方が講師に来て、生成AIの講義をしてくださったことです。その方が講義の中で「あなたは1人しかいないけれど、生成AIを使うと、何百人もの部下を抱えることができる」と言うのを聞いて、「カッコいいな!」と思いました。例えば生成AIで「意見を通したい人」「何でも反対する人」などさまざまなキャラクターを作り、生成AIだけの会議をするんです。それぞれの立場からどんな意見が出るのか、会議のシミュレーションをすることができて、すごく面白かったです。

――社内ダブルワークとDXプログラムの越境活動を通じて、ご自身の中でどのような変化を感じていますか。

片江氏:聞いたことはあるけれど使えなかったITの知識が自分のものになりました。実際に手を動かしてみると「意外と簡単なんだ!」と思うものもあり、そのスキルを現場のツールにも応用できるようになりました。

DXプログラムには佐賀県内で働くさまざまな年代、業種のビジネスパーソンが30人弱参加していて、ネットワークが広がったのも大きな成果です。話してみると、みんな同じような課題を抱えていたりして、意見交換ができたことはとても価値あるものだったと感じています。

越境活動を始めるまでは、任された仕事を正確にこなすことだけに注力していましたが、いまは部署全体の業務効率化を考えられるようになりました。1人だけでなく、チームで協力しながら目標に向かう楽しさを知ることができたのも大きいですね。仕事を単なる作業ではなく、なぜ必要なのか、その背景をきちんと理解しながら向き合えるようになったので、以前より仕事が楽しくなったと思います。

――実際に現場の生産性向上は実現できたのでしょうか。

片江氏:業務アプリ「kintone(キントーン)」を使った情報共有の仕組みを取り入れました。それまでは担当者同士の情報交換が、社外からの電話や口頭でのやりとりになっていたので、kintoneに入力しリアルタイムで情報共有できる仕組みを導入したんです。これにより、業務の効率化を実現しながらコミュニケーションの齟齬もなくすことができました。

また、NTT主管区間以外の故障や、顧客起因の故障はきちんと技術料をいただく必要があるのですが、佐賀センターはその実績が低かったんです。料金をいただくにはお客様に納得してもらうための説明が必要なので、トークスクリプトを共有したり、技術料の件数データを可視化してメンバーの意識を高めたりしました。これらの取り組みの結果、技術料は九州エリアで1位を獲得することができました。

片江さん本文内

施策を担当部署内に展開する片江俊介氏。農業機械メーカーを経て、2019年にNTTフィールドテクノに転職。佐賀センターで個人・法人対象の故障修理対応を担い、2025年7月から長崎県の対馬センターに異動


小さな改善を積み重ねれば
大きな成果へとつながっていく

――「E-1グランプリ2024」ではオーディエンス賞を受賞されました。

片江氏:最終選考では、営業や開発の部署で大きな成果を残した方のすごいプレゼンが続きました。その中で、修理やメンテナンスの現場で働く私のプレゼンが視聴者の方により身近に感じていただけたのかなと思っています。プレゼンの後で「私も現場で働いているのでよくわかります!」という共感の声もいただきました。

私の越境活動は、挑戦しようという意思さえあれば誰もができることだと思っています。目の前の業務から課題を見つけ、0から1を生み出す本当に小さな1つにすぎません。でも、現場で働く1人1人が1つずつでもチャレンジすると、価値が増えていき、大きな成果に結び付いていくと思います。

――最後に、越境活動を始めてみたいと考えている人たちへのメッセージをお願いいたします。

片江氏:越境活動を始める前の自分は、担当業務に不満があったわけではなく、やりがいも感じていました。でも、どこかモヤモヤしているものがあったんです。年齢を重ねていく中で、「このままいまの業務だけを続けていていいのかな」と悩むようになり、「自分の技術や知識の幅を広げたい」と思ったのが越境活動に対して一歩を踏み出せたきっかけでした。

チャレンジできるタイミングや機会があるならば、ぜひ手を挙げてみてほしいと思います。1つ始めると、次はこれを学ぼう、これに挑戦してみようと、活動がどんどんつながっていきます。

Q.越境活動、ひとこと失敗談 

A.社内ダブルワークのキックオフで、入社してはじめて大阪の本社に行く機会がありました。ただ、高層ビルが立ち並ぶオフィス街で、会社のロゴは見えているのに、全然たどり着けないんです。結局、担当の方に迎えに来てもらいました(笑)。

Q. 越境活動で出会ったおもしろいこと、もの、ひと 

A.佐賀大学のDXプログラムで登壇された日本マイクロソフトの講師の方はやはりすごくインパクトがあり、影響を受けました。「今日から毎日、生成AIに何かを打ち込みなさい」と言われ、「最初は何でだろう?」と思ったけれど、その通りに実行していくうちに、その意味がわかりました。

Q. 越境活動の思い出のひとコマ 

A.NTTフィールドテクノで業務効率化の取り組みを発表できる「DXキャンパス」という場があるのですが、はじめて参加して自分の取り組みを発表しました。社内ダブルワークやDXプログラムに参加しなかったら、このような場に応募しようとは思わなかったと思います。自分の中で業務に対する姿勢が変化したのを感じました。

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