クラウド技術が知られていない!
DX推進のためにも啓もう活動に注力したい
――まずは現在の業務内容についてお聞かせください。
鶴田光彬氏(以下、鶴田氏):2008年に入社し、ネットワーク・サーバー・セキュリティに関するSE業務を8年ほど担当したのち、サービス企画担当等を経て現在の部署に異動となりました。
現在はクラウド系の知識を生かし、全国30支店ある法人営業部門の本社SEとして現場の技術支援をするとともに、クラウド人材の育成のための教育や情報発信を担当しています。
――越境活動を始めようと思ったきっかけはどこにあったのでしょうか?
鶴田氏:業務を通してお客様や社内の担当者と会う機会が増えるにつれ、クラウド技術が日本市場には十分に浸透していないことに気が付いたんです。クラウドは限られた人にしか扱えない技術となっており、十分な知識がないために導入に踏み切れずにいる企業がたくさんあることもわかりました。クラウド技術の知識を持つ人材を増やしていくことでDXは進んでいくのではないか――。そんな思いから活動を開始しました。
ITエンジニアのためのコミュニティを立ち上げ
クラウド技術に関する勉強会を定期開催
――具体的な越境活動の内容についてお聞かせください。
鶴田氏:簡単にいえば、社外のIT勉強会に参加したことと自ら勉強会を主催したことですね。エンジニアのためのIT勉強会を支援するプラットフォームに「connpass(コンパス)」と呼ばれるものがあります。ここでは数万人規模のものから数十人規模のものまで、大小さまざまな技術者のコミュニティがあり、オンライン・オフラインともにさまざまなテーマで勉強会が開催されています。
その中で、2024年7月からMicrosoft Azure*(アジュール)やMicrosoft 365*に関する情報を発信する「WEST-CLOUD(ウエストクラウド)」というコミュニティを立ち上げ、平日の昼休憩時間や土日を活用し、月に1~2回の頻度で勉強会を開催しています。
*Microsoft Azure:Microsoftが提供するクラウドプラットフォーム
*Microsoft 365:Microsoftが提供する各種アプリケーションが一体となったサブスクリプション型のクラウドサービス
15~20分程度の短時間で習得でき、現場ですぐに実践できそうな知識・Tips(ヒント)を伝えることにフォーカスしてテーマ選定をしています。これまでに、「ChatGPTと何が違う? Azure OpenAI Serviceを学ぼう」「15分で分かる、初学者向け Entraで実現するゼロトラストセキュリティ」といったテーマの勉強会を主催してきました。活動内容やイベントの告知、勉強会の内容は自身で運営するブログにも掲載するなどして啓もう活動を続けており、同じ会社の仲間も巻き込みながらイベントの登壇者を募ったり、参加の声掛けをしたりしています。
――越境活動を進めるうえで最も苦労したのはどのような点でしたか。
鶴田氏:2022年頃から社外のコミュニティやイベントに参加していましたが、なかなか登壇する側として参加し、情報を発信したいと手を挙げることはできずにいました。誰が聴いているかもわからない社外の不特定多数の方々に対して何かを発表することは不安で、心理的なハードルが高かったんです。
そんなとき、NTT西日本の同じ部署の先輩が運営している「WEST-SEC(ウエストセック)」という日本最大級のセキュリティコミュニティがあることを知り、相談してみたところ、そのコミュニティの中で「1回発表してみないか?」と言っていただきました。テーマを考え、3カ月前から準備を開始して、何度もシミュレーションをしました。最終的には「Azureで公開Webサーバを作ってみよう」というテーマで講義とハンズオン(実践)研修を2時間、1人で主導しました。
結果、約50名の参加者が集まり、アンケートの結果は5点満点で4.4点を獲得。「無料でここまでできると思わなかった」「有料級講座」「Azureが理解できた」と好評で、自信につなげることができました。

鶴田光彬氏。NTT西日本株式会社 EP部ネットワーク&ソリューション部門所属。2008年にNTT西日本に入社。2024年度E-1グランプリにて「社外でのクラウド技術者コミュニティでの活動」と題して活動内容を発表。奨励賞を受賞した
お客様が勉強会に参加するケースも
本業での商談もスムーズに進んだ
――実際に越境活動に挑戦してみて、どのような成果を感じていますか。
鶴田氏:クラウド自体が日々変化しているので、毎日新しい技術について学びながらアウトプットを続けています。結果、社内外でのMicrosoftのナレッジ普及に貢献したとして2024年から2年連続で Microsoft Top Partner Engineer Award (Security分野) を受賞することができましたし、中でも日本で13人ほどしか選ばれていないMicrosoft MVP for Security「Microsoft Most Valuable Professionals for Security」にも選んでいただくことができました。
NTT西日本のホームぺージや社内のイントラネットで紹介されたことを機に認知がさらに広まり、大規模な技術者イベントで基調講演をしてもらえないかとご依頼いただくことも増えましたし、「connpass」での勉強会も最近では「このコミュニティで登壇してほしい」とオファーをいただく機会が増えてきました。
プロジェクトで学んだことを生かしてお客様の悩みを解決するようなテーマで勉強会を開催することが多いので、お客様の情報システム担当者から「鶴田さんのコミュニティで勉強させてもらっています」とお声がけいただき、商談がスムーズに進んだこともあります。
これまで1年強の活動期間中、22回ほどの勉強会を開催。当初50名前後が参加するイベントが多かったのですが、最近では100名を超える大型イベントも出てきています。現在450名前後のメンバーがいる「WEST-CLOUD」コミュニティを今後は1000人にまで拡大させていきたい。これからも全体の技術力向上・知識の啓もうを目指して活動を続けていきたいと思います。
――最後に越境活動を始めてみたいと考えている人たちへのメッセージをお願いいたします。
鶴田氏:お伝えしたいことは大きく3つですね。まずは最初から結果を期待しないほうがいい、ということ。興味がある、意義があると感じることの延長線上で楽しく取り組むことが大事だと思います。わかりやすい結果がついてこなくても、その時間自体に意味があると思います。
次に無理ない範囲で進めること。例えば「DXで日本を活性化させたい」といった大義名分は一朝一夕で実現できるものではありません。結果を追いすぎても続かないと思うので、まずは続けることを前提に進めていくのがいいのではないかと思います。
そして最後に最も重要なことですが、踏み出す勇気を持つこと。そのためには先輩を見つけたり、同じような課題意識を持っている人を見つけたり、仲間を見つけたりしていくことも大切だと思っています。
とりあえず思いついたものをアウトプットしてみる。結果がついてこなくても過程を楽しみながら続ける。仲間を見つけて周囲を巻き込んでいく。そうやって進めていけば、当初思い描いていた大きな目標に近づいていくことができると思うので、まずは一歩を踏み出してみてほしいと思います。
Q.越境活動、ひとこと失敗談
Q. 越境活動で出会ったおもしろいこと、もの、ひと
Q. 越境活動の思い出のひとコマ









