井上さんショート

34歳のとき、福岡県北九州市の職員を退職し、市議会議員選挙に出馬することを決めました。

北九州市で生まれ育ち、高校は地元の進学校へ。9割が大学に進学する中で、私自身は学びたいことが見つかりませんでした。目標といえば、早く「お母さん」になること。
それならば、早く自分の力で生きていけるように働こうと考え、公務員試験を受けることにしました。
学校の先生からは驚かれ、何度も「大学に進学したほうがいい」と説得されました。でも、私の決意は揺らぎませんでした。
同じ高校には、卒業後の進路に公務員を選ぶ人はいません。学校では公務員試験対策の実績がないため、自分で勉強するしかありませんでした。塾に通って勉強し、倍率40倍を勝ち抜いて公務員試験に合格。市の職員として働くことになりました。

市役所では窓口業務をしたり、生活保護のケースワーカーをしたり、さまざまな部署を経験しました。中でも印象的だったのは、観光PRのために地元門司港のキャラクター「バナナ姫ルナ」のコスプレをしたことです。自分なりのこだわりで衣装を自作し、それがテレビの全国放送で流れ、自分でも驚くほどの反響がありました。

この「バナナ姫ルナ」が、私のその後の人生を大きく変えるきっかけになります。公務員になれば安泰だと思っていたし、このまま定年まで公務員として働くものだと思っていました。
でも、バナナ姫をきっかけに市民の皆さんから直接、市政に対する要望や不満の声を聞くようになりました。とはいえ、1人の市職員にすぎない私にできることは少なく、もどかしい思いが募っていきました。
行政のことを知らないために生まれる不信感や不満が多く、市民にきちんと伝えられていないことを痛感しました。

――市民のために活動したいのであれば、行政から飛び出して、政治の世界に行くしかない。

とはいえ、2年ほどは悩みました。私は3人の子どもを育てるシングルマザーです。安定した公務員の仕事を離れ、当選するかわからない市議会議員に立候補することは不安でした。それでも、市民のために働きたいという思いはどんどん強くなっていきます。2021年、ついに15年半務めた市役所を退職し、北九州市議会議員選挙に立候補することを決意しました。

応援してくださった方々のおかげで当選し、市議会議員になって3年になります。もともと政治家の家系でもなく、特定の主義思想があるわけでもありません。そのため、無所属で活動することを選びました。
さらに固定費を上げないために事務所を持たずシェアオフィスを借りてみたり、対面にこだわらずSNSの交流に力を入れたりと、一般の人の「当たり前」の感覚を取り入れたいと考え、日々新しいことにチャレンジしています。
行政の出身だからこそできる、効果的な提案や情報分析、課題抽出がある。3年間の活動を通して、少しずつ手応えを感じられるようになってきました。2023年には16年ぶりに市長が変わりました。新しい市長と一緒に、北九州市の変革に取り組んでいきます。

(構成/尾越まり恵)
井上じゅんこ X

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