unyara(うにゃら)

ミュージシャン unyara(うにゃら)さん

未来を予測することはできない。それでも、前に進むために、決断すべきときがある。32歳のうにゃらさんは、悩んだ末に恋人と別れる道を選んだ。10年前の自身の決断を振り返り、いま思うことは?

決断に正解はない

 6月10日に誕生日を迎え、うにゃらさんは43歳になった。彼と別れてから、10年以上の年月が流れた。彼ともし別れずにいたら―――。そんな、もう1つの人生を想像したことはあるのだろうか。
 
 「正直考えるよね。別れなかったら、結婚して子どもを産んでいただろうな、と。でも、やっぱりうまくいかなかったと思う。一緒に生活するイメージが湧かなかったのよ。夢物語をずっと語り合っている感じで、生活に落とし込む感じではなかったんだよね。
 もし結婚して子どもに恵まれたとしても、別れたら1人で育てないといけない。30代の私の仕事の状況や覚悟だと、それは難しかったんじゃないかな。
 かと言って、子どもがいるからと我慢して微妙な気持ちのまま結婚生活を続けていたのか……と考えると、やっぱり別れて良かったなと思う。
 逆に、32歳ではなく、もっと早く彼とさよならして、お見合いして真剣に相手を探して家庭を持っていたら、また別の人生があったかもしれないな。でも、それも全部タイミングだから、私にとっては32歳のあのときだったんだと思う。『もしも』はないよね」

 いま10年前に戻っても、同じ決断をするのだろうか。
 「すると思う。あのとき、もう無理だと思ったんだから、やっぱり無理だったんだよ。だから、あのときの自分には、『その決断は間違っていないから、頑張れ!』と言いたい。まぁ、その後、大変なこともいろいろあったけど……。それも含めて人生だよね。正解はないよ」

unyara(うにゃら)

彼と別れた2年後、モヤモヤした気持ちを吹っ切るためにタイにひとり旅に出かけたうにゃらさん。後悔したこともあったが、彼と過ごした思い出は、いまは心のなかでキラキラ光る宝石となっている


 今のうにゃらさんについて、音楽仲間の香織さんはこう語る。

 「もしうにゃらが結婚していたら、それはそれでまた別の楽しみ方、生き方をしていたのかなとは思う。でも、いまはいろいろあったことを全部自分のものにしている感じがする。とにかく、すごく楽しんでいるなって思います」(香織さん)

選択肢があるうちはもがこう!

 家族の問題、うまくいかない恋愛、病気……さまざまな問題に直面したうにゃらさん。「過去にはもう死にたいと思うこともあった」と話す。

 「生きるのは大変だよね。このツラい世の中を生きるのは修業だと思う。でもさ、単純にご飯はおいしいし、太陽はのぼるし、空は綺麗だし、やっぱり生きたほうがいい、って思う。遊園地のジェットコースターみたいに、上がったり下がったりしながら、大変なことも楽しめればいいよね」

 特に20代、30代の女性が抱える悩みは、「選択肢の多さ」によるものが大きいとうにゃらさんは指摘する。

 「選択肢があるから苦しいんだよね。20代後半とか30代ってまだ若いから、やろうと思えば何でもできるじゃない。でも、30歳を過ぎると転職市場では『今が最後のチャンス』なんて言われてしまう。出産にも年齢的な限界がある。そういう周りの雑音とタイムリミットが苦しい。

 恋愛、結婚、仕事って全部つながっていると思うのね。どう生きるか、という問題だから。私たちの世代は、まだギリギリ専業主婦という選択肢もあったけれど、今はそれもなかなか難しいよね。だから、仕事をして自立することはすごく大事だと思う」

 悩んだときはどうすればいいのだろうか。

 「いろいろ悩むと思うんだけど、選択肢が多いうちはもがけばいいと思う。悩みから逃げないでほしい。本当につらかったら少し休んだり、距離を置いたりしてもいいけど、直面した問題から逃げると、いい結果にならないから。何でも一生懸命やれば、そんなに悪いことにはならないから大丈夫!」

 経済的な自立のために仕事に力を入れていると、結婚や出産のタイミングを逃してしまうこともある。

 「自分がどう生きたいのか、何が大事なのか、欲望を紙に書き出して整理してみるといいかも。出産にはタイムリミットがあるから、結婚、出産して家庭を持ちたいと思うなら、なるべく早くそっちにシフトしたほうがいい。
 前は私も恋愛結婚こそ最高の形だ、なんて思っていたけど、最近は違うと思うんだよね。お見合いや結婚相談所で出会った相手と一緒に、理想の形を作っていくことだってできるわけだから。待っていても、王子様は来ない。私は、来なかった」

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大変なことも多い10年だったが、「楽しいこともいっぱいあった」と笑顔を見せる


 「10年前は結婚して出産することが女の幸せだと思っていたけど、今は恋愛がすべてじゃないと思える。だから、生きてみるもんだよね。10代のあのピュアピュアな感じとか、20代のドロドロした感じとかさ、それでいいと思うし、これから50代、60代になったときに自分がどう思うのかも楽しみ」

 年を重ねることで、悩みが軽くなることもある。選択肢が減ることは、必ずしも不幸なことではない。

 最後に、うにゃらさんに聞いてみた。
 ――いま、結婚願望はありますか?

 「そんなに強い願望があるわけではないけど、1回はしてみたいかな。もう子どものことを考えなくていいから、お互いに自立して対等な関係を築けるパートナーと出会えると最高だなって思う。
 でもこの前、神社でおみくじを引いたら大吉が出てさ、理想の相手に『清廉潔白な人』って書いてあったの。あ、これは出会えないな、って思ったよね」

 そう言って笑ううにゃらさんには、明るい未来しか待っていないように思えた。

(文・尾越まり恵)

プロフィール
unyara(うにゃら)
ミュージシャン

1979年6月生まれ、埼玉県入間市出身。大学中退後フリーターになり、働きながら24歳で歌を始める。現在は会社員のかたわらミュージシャンとして活動。2020年に卵巣がんと子宮がんを併発。がんサバイバーでもある。
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