かおりさんショート

「決断」と言われて今でも鮮明に思い出すのは、10代のときに家族と離れて、自分の力で生きていこうとしたことです。情報誌を見て住み込みのアルバイトを探し、電話をかけて飲食店の面接を受けました。

家庭は、幼少期はわりと裕福でした。でも、中学2年のときにバブル崩壊の影響で父の会社が倒産、家族で家を転々とするように。ほどなくして父は家を出て行き、もともと不安定だった母の精神状態はますます悪化。母は実家の北海道で暮らすことになり、高校卒業までは姉と2人で川崎の狭いアパートで暮らしました。卒業後、金銭的な理由から、母の暮らす北海道に行こうという話になりました。でも、母との関係もうまくいってなかったし、東京には友達もたくさんいたから、どうしても離れるのが嫌だったんです。

結果的に、私の決断は実りませんでした。アルバイトの面接には合格したけれど、「未成年なので保護者の同意が必要」とのこと。母の猛反対に遭い、泣く泣く北海道に行くことに。でも、必死にバイトをして、1年後に1人で関東に戻りました。姉に母を押し付けてしまった罪悪感はありましたが、「自分の人生、家族に縛られたくない」と思いました。離れたことでお互いの体を思いやれるようになり、一緒に暮らしていたときよりも母との関係は良好です。あのとき「自分の人生を大事にする」と決めたことに後悔はありません。

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