かなこさんショート

私は23歳のときにSNSを通じて自分がX(エックス)ジェンダーであることをカミングアウトしました。
最初に違和感を持ったのは七五三。女の子は着物、男の子は袴と決まっていることが、私にはあまり受け入れられませんでした。自分で着物を決めたはずなのに、いざ着てみると違和感。それからずっと髪の毛を伸ばしたりセーラー服を着たりと、いわゆる「女性らしさ」を求められることに、ずっと強い嫌悪感がありました。

(私は、性同一性障害? それともレズビアン?)

今ほどLGBTQという概念が浸透していなかった当時、私には自分が何者なのかわかりませんでした。
違和感を抱えたまま、高校は音楽系の女子校に進学。不安だった女性ばかりの空間で、私ははじめて性別を深く意識することなく生活することができました。「生徒用」という1種類しかないトイレ、スラックスやネクタイが選べる制服――。女子校には、性別の垣根を感じさせる瞬間が驚くほど少なかったのです。

高校卒業後、音大へ進学。共学に戻ると、また性別を意識することが増え、違和感と闘う日々でした。何となく付き合った彼氏には「女性らしくしろ」と言われ続けてあっさり破局。女性らしさって何だろう。自分は男性になりたいのかもしれないと思い、髪を切り、胸の周りにさらしを巻いて男装したこともありました。でも何かが違った。 そんなとき、SNSでXジェンダーという言葉を知りました。男性、女性にとらわれない性別。そうか、私はこれだったんだ――。 性自認はXジェンダー、性的指向はアセクシャル。男性でも女性でもない「無性」という性別を自覚していて、かつ他者に対して性的欲求を抱かない。それが私。

その後、あるLGBTQ関係のYoutuberの方が主催したSNSイベントで、カミングアウト。以降も、親や会社、バンド仲間に打ち明ける機会を持ちました。会社の人からは、子どもと接する児童相談員という仕事柄、職員の理解をより深めたいと勉強会の開催が決定、プレゼンターを任されることになりました。

カミングアウトが正義だとは思わないし、それがすべてでもない。ただ自分には合っていたと思うだけです。本当はLGBTQなんて言葉やXジェンダーという肩書だっていらないはず。

「そうやんな、かなこの性別は、かなこやもんな」

バンド仲間が言ってくれた何気ないひと言。私にとってはそれがすべてです。ただありのままを受け入れることのできる社会に、もっともっと進んでいければいいなと思います。


かなこ Twitter

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