柴田未央

折り合いの悪かった母の死をきっかけに、2018年に東京理科大学薬学部に入り直し、薬剤師の道を志すことに決めました。

生まれ育った沖縄でともに暮らしていた母と折り合いが悪かったことから「いつか東京に出たい!」と思っていた私。「沖縄に残ったほうがいいんじゃない?」と引き留める母の言葉を後目に大学は青山学院大学国際政治学科に進学。18歳で上京すると周囲の人たちがあまりにもキラキラして見えて、「田舎者がとんでもない場所に来てしまった!」と劣等感に苛まれるようになりました。母親が仕事熱心で仕事のストレスを家に持ち帰ってしまうタイプの人間だったので、私は卒業後に「そんなに頑張って働きたくない!」と思い、結婚して専業主婦となりました。

2年ほど専業主婦として子育てに専念していたある日、母親に末期の肺腺癌が発覚しました。「1年はもたないだろう」と主治医より言われ、結局11カ月ほどで亡くなりました。

母は泣き言を言わない人間で、「こうしてほしい」「あれがしたい」と積極的に口にするタイプではなく、私はもともと母とは難しい間柄だったこともあり、どうしてあげたらいいかわかりませんでした。そんなとき出会ったのが、母が亡くなる直前に入院していた緩和ケア病棟の担当医でした。50代半ばの穏やかな先生で、親身に話を聞き、母と私の間にうまく入って話をしてくれました。そのおかげで私は母が亡くなる際、それまでほとんど触れ合うことのできなかった母の手を握ってあげることができました。

医師は治療の専門家でありさえすればいいものだと思っていましたが、こうして信念をもって働いている方がいるんだということに感動した私は、医療系に進みたいと考えるようになりました。医師や看護師は向いていないと感じ、薬学部なら何とか目指せるのではないかと薬学部への進学を決意。中学生の理科の教科書を取り寄せるところから始めて勉強をやり直し、文系の私が「数学Ⅲ」まで猛勉強。2018年、無事に東京理科大学薬学部に入学することができました。

大学入学後、起業家が集まるイノベーター育成プログラムに夫が参加するのに一緒についていったところ、世の中こんなに楽しいことをしている人たちがいるんだ!と感銘を受け、「自分で会社を起こしたい!」と思うように。学内の支援プログラムを活用し、学生起業することに決めました。

起業する際にテーマにしたのは、弟が長年苦しんできたアトピー性皮膚炎。世の中の肌トラブルをなくすことを理念として、一人ひとりに合った具体的なスキンケア製品を提案するスキンケアフィッティングサービスや、法人向けに受託研究も手掛けています。

大学ではみんなの恋愛相談に乗りながら楽しく勉強できていますし、どのように人生を歩んでいくべきか考え直せて本当に良かった。現在5年生なので、まずは来年の卒業試験を突破し、国家試験に合格すること。そこを目指して進んでいきたいと思います。


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