2020年1月10日、山形県・蔵王温泉の高湯通りに日本初の温泉コーデショップ「Zao Onsen 湯旅屋 高湯堂」をオープンしました。
私が旅好きになったのは、高校3年生の夏休みのこと。北海道旭川市に生まれ育った私が自転車で3年かけて北海道一周したのを機に観光業に興味を持ち、学校卒業後はスキー場でのリゾートバイトや団体旅行の添乗員、観光案内所や資料館のスタッフなどの職を転々としつつ、その合間に、車で日本一周を2回しました。
2012年、27歳になる年に「東日本大震災で傷ついた東北地方に何か貢献できるような仕事がしたい」と考え、リクルートの旅行情報媒体「じゃらん」の営業担当として、東北支社に入社。旭川から仙台に移り住みました。担当は主に蔵王温泉の宿泊施設の広告を取り付け、集客・顧客満足度向上に寄与する広告営業でしたが、毎週のように蔵王温泉で開催されるイベントの手伝いをしているうちに、蔵王温泉の人たちとの親交も深まり、半年経つ頃にはあっという間に蔵王温泉の大ファンに。「いつか蔵王で観光に関する何かの事業を展開していきたい」と思うようになりました。
好きが高じて翌年には所属していた旅行営業統括部の営業成績で通期MVPも獲得しました。
3年間は蔵王の宿泊施設を担当し、その後、地域振興を専門とするじゃらんリサーチセンターに異動し広島支社に配属。四国4県の行政や観光協会、観光地域づくり法人(DMO)等の観光組織の担当となり、地域をプロデュースする仕事に従事しました。四国で2年間経験を積みながら業務と並行する形で起業を決断。2017年4月に盛岡拠点へ異動するタイミングで株式会社LABEL LINKを起業しました。
蔵王温泉はかつて「高湯温泉」と呼ばれていて、1950年にいまの「蔵王温泉」に改名されています。スキーブームとともにスキー場近くに新しい宿泊施設や飲食店が開業し、蔵王温泉は大いに賑わった一方、蔵王温泉の温泉街としての始まりの通りである「高湯通り」は、徐々に賑わいが薄れ、スキーブームのピークから30年ほどで空洞化が進んでいきました。リクルートを退職して新会社の業務一本に絞った2019年時点で高湯通りには建物数28に対して12軒が空き店舗。そこで、この高湯通りに15年ぶりとなる新規出店店舗として、日本初の温泉コーデショップ「Zao Onsen 湯旅屋 高湯堂」を2020年1月10日にオープンしました。
温泉の街歩きを楽しんでもらうという意味でも、これまで培ってきた商品開発や小売りに関する知識を生かすという意味でも、温泉宿の運営ではなく、お土産に特化したいと考えていました。隣接する建屋に「休憩所」を作ってワークショップが楽しめるようにしたこともこだわりの1つです。ショッピングカートは「湯桶」で、蔵王のオリジナルブレンドコーヒーや「湯みくじ」 、だるまみくじのガチャガチャなど、見ていてかわいい、思わずクスっとするようなユニークな商品をたくさん取り扱っています。
モダンながら落ち着く。また来たくなる店舗を目指してスタッフのコミュニケーションの取り方1つにも気を遣っています。オープンはコロナ禍という厳しい状況でしたが、3密を避けて静かに楽しめる「こけしあーと」の体験プログラムや温泉街全体を巻き込んだ蔵王温泉ミステリーハントなどの体験企画を考え、何とかここまでたどり着くことができました。
国内の観光客からも、外国人観光客からも「日本の温泉ってすごい!」と言ってもらえるような街づくりをしていきたい。「地域の継承」、「心に響く旅」を実現するため、温泉コーデショップを核としながら、これからもさまざまな企画を考えていきたいと思います。
(構成/岸のぞみ)
Zao Onsen 湯旅屋 高湯堂 ホームページ