龍馬さんショート

10年前、新卒から18年間勤めた東京の出版社を退職し、高知県に移住しました。
神奈川県川崎市で生まれ育った私と高知をつなぐ縁は、「坂本龍馬」という名前です。龍馬好きの父が、「坂本姓なら息子は龍馬だ」と言って名付けられたのです。若い頃は、坂本龍馬を意識して「名前に恥じない人生を生きなければ」という気負いもありましたが、名前負けし続けて50年。最近では受け入れて生きています。1回会えば絶対に名前を覚えてもらえるので、むしろ得したことのほうが多いですね。

新卒で出版社に入社し、広告や営業、中国赴任など、さまざまな経験をさせてもらいました。NHKの大河ドラマ『龍馬伝』が放送された2010年には、「名前が同じだから編集長をやってほしい」と言われ、ムック本の『Ryoma』を4冊出版。仕事は楽しかったのですが、時代の流れとともに利益を強く求められ、以前のように楽しい本づくりができなくなっていきました。「やり切った」という思いもあった。

そんなとき、たまたま高知県のスポーツ振興の仕事の募集を見つけました。『Ryoma』の制作時に坂本龍馬生誕の地である高知県を訪れた縁で、メルマガを購読していたのです。もともとスポーツが好きで、この仕事に強く惹かれました。ただ、5教科の筆記試験があり、物理も数学も難しかったので「受からないだろう」と思っていたら合格。龍馬がつないでくれた縁だと思い、移住を決意しました。もし高知県でなければ、行きたいとは思わなかったでしょう。龍馬は27歳で土佐藩を脱藩しましたが、私は40歳で東京から高知に逆脱藩です。
東京生まれ、東京育ちの妻は最初は渋い顔をしていましたが、私のやりたい仕事を支持し、3人の子どもと一緒についてきてくれました。

高知はあたたかい街です。ご飯もおいしく、街のサイズがコンパクトなので移動がしやすい。そのかわり、どこに行っても知り合いに会います(笑)。「友達と離れたくない」と移住を嫌がっていた、当時小学生の長女はすぐに馴染み、真っ先に土佐弁を使いこなすようになりました。移住から10年、ストレスのない暮らしができています。 2020年からは、観光PRを担当しています。コロナ禍で観光客は激減、これからまた高知県の観光を盛り上げていきたいと思います。

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