和枝さん差し替え

合同会社にこ 代表社員 関口和枝さん

コンテンツ制作、ITコンサルティング、BARオーナーとしてさまざまな経験を積んできた関口和枝さんに、コロナ禍で大きな心境の変化が訪れる。「子どものために、とにかく稼ぐ」という軸で選んできた仕事から一転、多くの人を幸せにできる仕事を模索し始めた和枝さん。その結果、化粧品の企画・販売という新たな事業への挑戦を決意する。最終回となる第3回では、決断の背景と、挑戦の内容を紹介していく。

コロナ禍で考えた「共生のためにできることは?」

 2019年7月に東京・中目黒に「にこバー」をオープンして1年足らずで、世の中は未曾有のパンデミックへと突入する。新型コロナの感染拡大は飲食店を直撃、和枝さんが経営する「にこバー」も休業を余儀なくされた。
 しかし、和枝さんは「コロナは私にとっては考え方を整理するグッドタイミングだった」と当時のことを前向きに振り返る。

 「今まで経験したことのない状況で、正解がわからないまま判断しなければならないことばかりだった。ただ、その中で確実だったのは、このコロナの感染拡大とそれに伴う各種の規制によって職を失う人がいたということなんですよね。本当に大変なのは未知の病と闘うことではなくて、明日食べるお米がないことだと私は考えました」

 芸能プロダクションに勤務していた時代の知人たちは、ライブがキャンセルになる、舞台ができなくなる、といった苦境に陥っていた。

 「周囲がその人たちを気づかって、『大丈夫? 元気? とLINEしたんだけど返事がなくてさ』と言ってたりするんですよ。そこに悪気がないのは分かるけれど、私はその行為は配慮にかけると思いましたね。だって、『大丈夫?』という声かけでお腹いっぱいになりますか? ならないですよね」

 そこで、和枝さんは進行中のプロジェクトの業務の中から、いくつかの仕事を彼らに依頼していった。
 「ライブができなくなったミュージシャンに対して、歌ではないんだけど、ジングルを作ってくれないかな、とか、離れすぎないところで仕事をお願いしてきました。そうしたら、みんな喜んで引き受けてくれた。あとで、あの時の5万円、10万円がすごく助かったと言ってくれたんですよね。あ、そういうことだな、と思って」

 シングルマザーとして1人で息子を育ててきた和枝さんは、これまで収入や待遇で仕事を選んできた。
 「でも、コロナ禍をきっかけに、自分と子どもが食べるだけではなく、みんなと共生するために仕事をしたいというふうに考え方が変わったんです。にこバーは休業したけれど、飲食店には国からの協力金が入りました。みんな良かったねと言ってくれた。でも、私たちは収入に応じて同じように納税しているのに、国からの助成金をもらえる人ともらえない人がいたわけじゃないですか。
 私が何かをすることで雇用を生み出したい。まわりにはいろんなクリエイターや専門家がいて、『あの人にはこの仕事をお願いできるんじゃないか』と考えながら、私なりの経済圏をつくっていけば、それが実現できるのではないかと思いました」

 そんなことを考え始めたときに、知人から紹介してもらったのが「CBD(カンナビジオール)」という原料だった。

資金調達、保管方法、製品の審査……さまざまなハードルを乗り越え製品化

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