
2020年、動物病院を拡張するため、1400坪の土地を購入して飲食事業に参入することを決めました。
幼い頃からペットをたくさん飼っていたので、猫や鳥、犬など動物は常に身近な存在で、動物病院にもよく通っていました。ある日、ペットショップで買ってきたばかりの猫がひどく弱っており、すぐに病院に連れて行きましたが亡くなってしまうという悲しい出来事がありました。小学校低学年にして、「ペットの命を救う仕事がしたい」と考えるようになり、大学は麻布大学獣医学部に進学。大学在学中にお付き合いをしていた人が北海道出身で、「卒業したら十勝に来てくれますか」とプロポーズされたことを機に、卒業後は迷わず北海道に移住しました。私は東京出身ですが、実はテレビで見た十勝の光景に長く憧れており、「いつか十勝で獣医師になりたい!」と思っていたところだったのです。
夫は馬や牛などを診る獣医師で、私は犬や猫を扱う動物病院で勤務を開始しました。妊娠を機に、子育てをしながらのんびりとペットの診療をしようと自宅兼診療所を建てて開業することを決意。2001年11月のオープンを目指して準備していたところ、8月に2人目が生まれたため、何とか3カ月で準備を整えて開業しました。3年後には3人目の子どもを出産。産休は3日だけで職場に復帰し、子育てと診療で忙しくも充実した日々を送るようになっていました。(下線は削除)
経営が軌道に乗って余裕の出てきた2020年、もともとあった10坪の動物病院では少々手狭に感じるようになってきたため不動産会社に相談したところ、660坪と770坪の2区画が売りに出されていることを知りました。動物病院でそんなに多くの区画は必要なかったので770坪のほうを購入しようか検討していたところ、隣の区画を獣医が購入しようとしていることを知りました。
それはまずい――。
気づけば「両方売ってください!」と計1400坪の土地を購入することを決めていたのでした。
そうは言っても動物病院に必要なのはせいぜい4分の1程度。残り4分の1はドッグランにすることを決めました。さらに残った土地をどうするか。ドッグカフェを経営するのも面白いかもしれないと考えていたところ、近隣のケーキショップの経営者と知り合うことができ、その方に運営を依頼することになりました。ところが、時は2021年。既にコロナ禍だったため、大型のレストラン運営は苦境に立たされることとなりました。
動物病院はコロナ禍にペットを飼う人が増えた影響で売り上げが上がっていたのですが、その利益をすべてレストランが食いつぶしていく厳しい経営状況が続きました。しかしコロナ明けとともに自身が所属するさまざまなコミュニティで宣伝活動に注力し、あらゆる人脈を駆使して婚活パーティーなどの貸し切りイベントを実施したり、昼間はサロンや会議室といった時間貸し需要を掘り起こしたりしながら何とかここまで経営を続けてくることができました。
犬用のメニューを提供するドッグカフェとウエディングやイベントなどで活用いただけるようなウエディングカフェが合体した大型レストランの経営は本当に七転八倒の日々。現在経営はケーキショップの経営者に代わって当社が担っており、シェフやスタッフを雇い入れて運営しています。人材を探したり企画を考えたりと試行錯誤をしながらの4年間。ひとまずこのレストラン事業を軌道に乗せることが第一目標ではありますが、まだ土地も残り4分の1ほど残っているので、ペットと住めるアパートや宿泊施設の建設、私の子どもたちが薬剤師をしているため人間用の薬も動物用の薬も処方できる日本初の薬局の建設など、まだまだ野望は尽きません。
「行雲流水(こううんりゅうすい)」という言葉が好きで、流れに身を任せながら生きてきた私。隣の土地を別の獣医が買うというので勢いに任せて買った1400坪の土地や、非常に珍しく幸運を呼ぶといわれる三毛猫のオスを飼育したことをきっかけに作ったオリジナルデザートなど、これからも「次は何が来るのかな」と楽しみにしながら、うまく流れに身を任せて生きていけたらと思っています。
株式会社すずらん動物病院 ホームぺージ








