
2024年の秋、自ら脚本と監督、プロデューサーを務め、「解離性同一性障害」をテーマにした映画『心のパズル』を制作することを決めました。
子どもの頃からアレルギー体質で、ひどいアトピー性皮膚炎と喘息(ぜんそく)に苦しんできました。ステロイドで何とか抑えていたものの、20歳を過ぎるとほとんど効かなくなりました。社会に出たのは「24時間戦えますか」の時代です。しかし、とても同世代の人たちと同じような働き方はできません。何とか珈琲の焙煎と卸を営む会社に採用してもらいましたが、半分病人のような生活を送ることになりました。
転機が訪れたのは、20年ほど前のことです。新しい民間療法と出会って、体調がかなり回復したのです。せっかく体が動くようになったので、何か行動に起こしたい、と考えたときに思い浮かんだのが、10代の頃からずっと憧れていた映画を作ることでした。
まずは資金を貯めることから始めました。もともとずっと体調が悪かったので、仕事が終わったらまっすぐ家に帰って体を休めるような生活だったため、お金を使わなかったんです。貯めていたお金を元手に資産運用して、少しずつ増やしていきました。
最初は、自分が監督を務めて作品を撮るというよりは、脚本を書いてそれを誰かに監督してもらえたらと考えていました。多少良くなったとはいえ、病気を抱えた身では、いつまた思うように動けなくなるかわかりません。もし制作中に寝込んでしまったら、たくさんの人に迷惑をかけてしまうと思ったんです。
それまでに独学で脚本を勉強し、いくつも書いていました。テーマとしてずっと関心を持っていたのは、「心の矛盾」です。若い頃から自分の心の矛盾を感じ、それはどうしてだろうとずっと悩んでいたんです。そんなときにダニエル・キイスが書いた解離性同一性障害(多重人格障害)をテーマにした小説『24人のビリー・ミリガン』を読み、そこにヒントを見つけられた気がしました。関連書を読み漁り、自分が悩んできた心の矛盾について、ある程度整理することができましたので、そのことを映画にしたい、と考えたのです。
しかし、テーマの難しさゆえか、知り合いの映画関係者に相談してみたものの、なかなか監督を引き受けてくれる人が見つかりません。「自分でやってみたら?」と周囲に背中を押され、67歳のときに「たとえ自分の体のせいで撮影が途中で止まってしまったとしても、自分で監督をやってみよう」と決断しました。
そこから知人の紹介で知り合った、『マリッジカウンセラー』や『21世紀のおじさん』などの作品を手掛けた映画監督の前田直樹さんと、プロデューサーの山﨑歩さんとともに制作がスタート。大手芸能事務所にも声を掛けさせていただき、オーディションには700人以上の役者の方々が応募してくれました。
70歳を目前にして、映画の制作では多くの新しい体験をさせていただきました。特にカメラマンや関係者と一緒にアイデアを出し合いながらカット割(各シーンの構図やアングル、長さ)を話し合うのは非常に楽しかったですね。撮影の後、2025年末に作品が無事に完成。映画館での公開にまでこぎつけることができて、ほっとしています。
人の心は多面的で、得てして矛盾をはらんでいます。映画『心のパズル』では、心の複雑さに翻弄されながらも、自らと対峙して生きる人々の姿を描きました。はじめて手掛けた映画ですが、エンターテインメントのプロフェッショナルであるスタッフやキャストの方々の力を集結し、楽しんでいただける映画に仕上げることができたと思います。
病気ばかりの人生でしたが、諦めずに挑戦し、映画を制作するという大きな人生の目標を達成することができました。
(構成/尾越まり恵)
子どもの頃からアレルギー体質で、ひどいアトピー性皮膚炎と喘息(ぜんそく)に苦しんできました。ステロイドで何とか抑えていたものの、20歳を過ぎるとほとんど効かなくなりました。社会に出たのは「24時間戦えますか」の時代です。しかし、とても同世代の人たちと同じような働き方はできません。何とか珈琲の焙煎と卸を営む会社に採用してもらいましたが、半分病人のような生活を送ることになりました。
転機が訪れたのは、20年ほど前のことです。新しい民間療法と出会って、体調がかなり回復したのです。せっかく体が動くようになったので、何か行動に起こしたい、と考えたときに思い浮かんだのが、10代の頃からずっと憧れていた映画を作ることでした。
まずは資金を貯めることから始めました。もともとずっと体調が悪かったので、仕事が終わったらまっすぐ家に帰って体を休めるような生活だったため、お金を使わなかったんです。貯めていたお金を元手に資産運用して、少しずつ増やしていきました。
最初は、自分が監督を務めて作品を撮るというよりは、脚本を書いてそれを誰かに監督してもらえたらと考えていました。多少良くなったとはいえ、病気を抱えた身では、いつまた思うように動けなくなるかわかりません。もし制作中に寝込んでしまったら、たくさんの人に迷惑をかけてしまうと思ったんです。
それまでに独学で脚本を勉強し、いくつも書いていました。テーマとしてずっと関心を持っていたのは、「心の矛盾」です。若い頃から自分の心の矛盾を感じ、それはどうしてだろうとずっと悩んでいたんです。そんなときにダニエル・キイスが書いた解離性同一性障害(多重人格障害)をテーマにした小説『24人のビリー・ミリガン』を読み、そこにヒントを見つけられた気がしました。関連書を読み漁り、自分が悩んできた心の矛盾について、ある程度整理することができましたので、そのことを映画にしたい、と考えたのです。
しかし、テーマの難しさゆえか、知り合いの映画関係者に相談してみたものの、なかなか監督を引き受けてくれる人が見つかりません。「自分でやってみたら?」と周囲に背中を押され、67歳のときに「たとえ自分の体のせいで撮影が途中で止まってしまったとしても、自分で監督をやってみよう」と決断しました。
そこから知人の紹介で知り合った、『マリッジカウンセラー』や『21世紀のおじさん』などの作品を手掛けた映画監督の前田直樹さんと、プロデューサーの山﨑歩さんとともに制作がスタート。大手芸能事務所にも声を掛けさせていただき、オーディションには700人以上の役者の方々が応募してくれました。
70歳を目前にして、映画の制作では多くの新しい体験をさせていただきました。特にカメラマンや関係者と一緒にアイデアを出し合いながらカット割(各シーンの構図やアングル、長さ)を話し合うのは非常に楽しかったですね。撮影の後、2025年末に作品が無事に完成。映画館での公開にまでこぎつけることができて、ほっとしています。
人の心は多面的で、得てして矛盾をはらんでいます。映画『心のパズル』では、心の複雑さに翻弄されながらも、自らと対峙して生きる人々の姿を描きました。はじめて手掛けた映画ですが、エンターテインメントのプロフェッショナルであるスタッフやキャストの方々の力を集結し、楽しんでいただける映画に仕上げることができたと思います。
病気ばかりの人生でしたが、諦めずに挑戦し、映画を制作するという大きな人生の目標を達成することができました。
(構成/尾越まり恵)
『心のパズル』5月23日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開中
プロデューサー・脚本・監督:門脇重治
出演:矢野聖人 六角慎司 小沢まゆ 佐伯日菜子 小松利昌 他
公式ホームページ







