たっさんショート

大きな声では言えないんだけど、10代の頃からお酒を呑んできました。俺には酒しかない、と思ったのは20代。ワインを勉強したこともある。随分いろんな酒を呑んできましたが、30代後半のときに、日本酒で生きていこう、と決めました。

株の才に恵まれた祖父が財を肥やし、実家は裕福でした。しかし、2歳のときに母が他界。9歳で父が再婚し、弟が生まれて俺の居場所はなくなった。義母に愛されることなく、18歳で家を出ました。母親のいない人生が、俺を“外道(げどう)”にしたのかなと思います。会社員として働いても自分の思うところが強く、上司や社長とケンカして続かない。結婚生活は10年で破綻。そんな俺でも、酒を愛し、教養を深めることだけは熱心に続けてきました。

酒は人と人との縁をつなぐ。40代の後半に差し掛かったとき、1人の編集者が「あんたは、酒数奇者(さけすきしゃ)だ」と言ってくれた。「数奇者」はお茶の世界でよく使われる言葉で、その道に執心する人のこと。「あんたも好き(数奇)ねぇ」と言うアレだ。そう、俺は日本酒も好きですが、それにまつわる酒器や着物などの文化も愛しているんです。

正直、今の日本酒業界は迷走してるかな。俺はさ、もっともっと面白くしたいと思っているんですよ。「日本酒とはこうあるべき」というメインストリートには興味がない。酒は、お金や知識のある特別な人たちだけの楽しみではない。普通の人が、日常の中で楽しめるのが本来の姿で大事なこと、というのが俺の考えです。日本酒にまだ触れたことのない人たちに、日本酒の面白さを広めていきたい。俺らしく、外道のやり方でね。

撮影協力/酒と魚 BASE


佐々木達郎 Instagram

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