いつものようにお酒を飲んでいたある日のこと。
「この前ネットを見ていたら、“めっちゃ”は死語という記事を見つけたんですよ!」と、相棒のきしとんが言った。
「めっちゃって、別に流行語とかじゃなくて、関西弁だから! こちとら、物心ついたときから使っとんねん」
神戸出身のきしとんは、いたくご立腹の様子。
そういえば、2022年に流行語大賞にノミネートされた「知らんけど」も、「え? 前から普通に使ってるけど、流行語? なんで?」という関西人の声はよく耳にした。
勝手に流行して、時期がすぎたら「死語」とか言われて、確かに迷惑な話である。
「very(=とても、すごく)」を表す言葉で思い出すのは、「超」。モーニング娘。が「超超超!いい感じ!」と歌っていた頃、誰も彼も「超むかつく~」「超疲れた~」と言っていたよね。その前は、「チョベリバ」なんて言葉もあったな(笑)。
自分でも無意識に使う言葉は変わっていて、いまはどうかと言われると、やっぱり「めっちゃ」なのである。強調するときは、「めちゃくちゃ」。あとは「マジで」かなぁ。
もはや「めっちゃ」を使わないのだとしたら、いまの若者は何を使っているのだろうか?
気になったので、26歳女子に聞いてみた。
「ガチでとか、まじで、使います(笑)。言い方も、ま、じ、で、と溜める感じで言ったりして、凄さをより伝えるように言ったりしています。
超も言います!! めっちゃ、むっちゃとかも。大学生のときは、めちゃんこもよく言っていました。友達の会社の新卒の子は、オニと言うらしいです!」
はい、「ガチで」「オニ(鬼)」、新登場。
同じく、26歳の別の体育会系女子と飲みに行ったところ、彼女は「ほんとに」を多用していた。
フジテレビのトーク番組「ボクらの時代」に23歳の俳優3人が出演していたので気を付けて聞いてみたら、彼女たちは「めちゃくちゃ」「すっごい」「マジで」と言っていた。
はて……?
方言や文章、外国語の場合は?
ちなみに、方言でいうと、私の地元・北九州市は「そうとう」とか「バリ」を使う。これが福岡市になると「やんや」に変わる。とはいえ、私が福岡に住んでいたのは15年近く前だから、いまは違うかもしれないけど。
「あんた、やんやしゃーしー!」(訳:あなた、ものすごくうるさい)と言うのは愛情を込めて(←これ大事)よく使っていた。博多弁を話す女子はかわいいと言うけど、そうでもないよ?(笑)。
ライターとして記事を書く場合、地の文では、「非常に」「大変」を使うことが多い。少しカジュアルな記事だと、「とても」を使うこともある。
インタビュー記事などで、話し言葉に近づける場合は、「すごく」「とても」が一般的。時々、人柄を出したくて、その人が話した通りに「めちゃくちゃ」とか「めっちゃ」と書いてみると、たいてい赤字が入って丁寧な言葉に直されてしまう(苦笑)。
文章では表現の幅が狭く、単調になりがち。そう考えると、口語の多様さは素晴らしいと思う。
わたしはいま韓国語を勉強しているのだけど、韓国語にも「너무(ノム)」「아주(アジュ)」「많이(マニ)」などの強調表現がいくつかある。より強調したいときには、「ノムノム」や「マニマニ」と重ねて言ったりするので、日本語の「めちゃくちゃ」に近い気がする。
ただ、面白いなと思うのが、「美人すぎる女子アナウンサー」とか、「やばすぎる」とか、日本語でよく使う「〇〇すぎる」という言い方は、韓国にはない。
英語にも「too much」「too expensive」など、「〇〇すぎる」を表す表現は存在するけどね。
韓国語の「너무(ノム)」に「~すぎる」という表現が含まれるらしく、普通に「ノム〇〇(とても〇〇)」と言うことが多いそうだ。
一方で、韓国では「~죽겠다(チュッケッタ)」(死にそう)という表現をよく使う。
おなかがすいて死にそう。疲れて死にそう。〇〇してほしくて死にそう。
何かとすぐに死にそうになるんだなと思うけど、韓国人いわく、「本当に死ぬことはないので安心してくださいね」とのこと(笑)。
いやはや、言語は奥深くて面白いね。
ほんで、結局「めっちゃ」は死語なんですか?