推しの俳優も順調に増え続け、数カ月に1度は嬉々としてファンミーティングに出かけている。
そうなると、言葉を扱う職業柄もあり、「推しの言葉を理解したい!」「推しと同じ言葉を話してみたい!」という感情がむくむくと湧き上がり、2023年7月から、韓国語の勉強もほぼ独学で進めている。
参考書を1冊買って、まずはハングルの構造を理解するところからスタート。ハングルは母音と子音の組み合わせで成り立っているので、覚えてしまえば読むこと自体はそう難しくない。
言語習得でカベとなるのは、まずはボキャブラリーの数。大人になると人は3~5万語ほどを習得し生活しているのだそうだ。それがほぼゼロからのスタート。いまさら暗記か、とちょっと心が折れそうになる。
そんなわたしを励ましてくれるのが、この教材。
『イ・ジュンギと一緒にアンニョンハセヨ韓国語』

1を終えて2を勉強中。なんとこのシリーズは3まである
会話文と文法の解説、聞き取り練習などから構成されていて、中学の英語の教科書『NEW HORIZON』(東京書籍)か?(なつかしい!)と思うくらいよくできている。
さらに付録のCDがついていて、わたしの最推しイ・ジュンギ氏の声とともに勉強ができるのも魅力。「ジュンギの声、やっぱり好きだなぁ。滑舌いいし♡」と、キュンキュンしながら、勉強に励んでいる。
これ、わたしのために作られた教材やん!
韓国語と日本語の文法が似ているというのは有名な話たけど、韓国語にも漢字由来の言葉があるから、音も日本語にとても近い。
「さんまのまんま」に俳優のパク・ソジュン氏が出演したときに、「微妙な三角関係」の音が同じと話題になっていたけど、約束、家族、正直、温度など、漢字から派生した言葉は、日本語とほとんど同じ発音だ。
さらに、音はちょっと違っていても、「学」という漢字は「ハク」と発音することを覚えてしまえば、「学生」は「ハクセン」、「学校」は「ハッキョ」と応用できる。
覚えやすーい!
日々の勉強法としては、テキストで文法を習得するとともに、毎日韓国ドラマを観て、とにかく耳に韓国語の音を馴染ませる。歩きながら一度見たドラマを再生して聞いていると、どの場面のどんな会話かがだんだんわかってくる。そのほかYouTubeやInstagramで韓国語の会話やインタビューを聞いたり、この半年くらいは韓国人の先生に月に2回ほどオンラインで発音や会話のレッスンを受けたりもしている。
そんなこんなで、勉強を始めてかれこれ1年半。意外と続いている。
立ちはだかる「リウル」の壁
ボキャブラリー習得と同時に、ぶち当たるのが発音のカベだ。当然、韓国語は漢字由来の言葉だけでなく、独自の言葉もたくさんある。
そもそも日本語の母音は5語、子音は13語に対して、韓国語の母音は21語(複合母音11語を含む)、子音は19語。つまり、日本語にはない発音が数多く存在するのだ。
その中でも特に難しいのが、このリウルちゃん→ㄹ
日本語で表現するなら、ル(Ru)の母音uを取ったRだけ、というのが一番近いけど、実際にはLとRの間くらいの音。英語が話せる人は理解できるらしいけど、わたしにはよくわからない。日本人は舌を巻きすぎるらしい。
「る」といえば、母音をしっかりつけて「Ru」と発音することに慣れている日本人には、ㄹの発音は本当に難しい。
ほかにも、韓国語にはk、m、pなど、母音のuを発音せず子音で終わる音がいくつも存在する。これ、わたし一生発音できる気がしない。
発音以外にも、言語の謎は多い。ネイティブだと当たり前のように普段口にしている表現も、他の国の言語を1から学ぼうとすると「なんで?」といちいち引っかかってしまう。
だからこそ思う。言語習得には「生まれたときからそうだった」のマインドが必要だ、と。
20歳を「はたち」を読むことに、理由なんてない。生まれたときからそうだったのだから。そんな感じ。
道案内にチャレンジするも、1ミリも伝わらず
さて、1年半でわたしの韓国語レベルはどの程度までアップしたのか?
ボキャブラリーは、だいたい400語くらいに増えた。でも、これではまだ日常会話は全然できないレベル。
そんなわたしに、先日、実力を試すチャンスが訪れた 。
出張帰りに羽田空港からモノレール浜松町に着き、乗り換え改札を通ってJR山手線のホームに降りようとした手前で、韓国人の50代くらいの男性が人に道を尋ねている声が聞こえてきたのだ。韓国語しか話せないらしく、聞かれた日本人は戸惑っている。
これはチャンス! とわたしは近づき、「どうされましたか?」という顔をしてみた。
こんなときにどう話しかければいいか、May I help you? 的な韓国語がとっさにはわからなかったので、言葉ではなく顔で(苦笑)。
すると、男性はスマホの画面を見せて、「ここに行きたいんだ」という素振りを見せる。画面には「東京プリンスホテル」と書かれていた。
「オー、東京プリンスホテルネ、オッケーオッケー!」と自分のスマホで検索すると、最寄り駅は御成門(おなりもん)。うーん、三田線か……。浜松町から歩けなくもない距離。でも、迷うだろうな……。
そもそも、日本人であってもJR浜松町駅にいる人を御成門に導くのは難しい。大門から大江戸線で三田に行って、三田線に乗り換える……? いや、むずい。
「東京プリンスホテル、御成門ヨク(東京プリンスホテルは御成門駅)。
御成門 イズ チハチョル(御成門は地下鉄)。
イゴ、JR LINE。(これ、JR線)。
JR LINE アニラ チハチョル(JR線ではなく、地下鉄)。
ノー JR LINE(JR線じゃないんだよ)」
一生懸命、英語交じりの(笑)わたしの中のせいいっぱいの韓国語で説明するが、1ミリも伝わらない。そもそも、オジサンはいまいる駅がJR LINEだと理解していない可能性も高い。
つたないわたしの説明にオジサンがしびれを切らし、ポケトーク的な翻訳アプリを突き出して「これにしゃべってくれ」という仕草をする。
「JRじゃなくて、地下鉄です」としゃべってみるが、わたしの滑舌が悪いのか、うまく変換されない。というか、変換されたとしても、意味はきっと伝わらないだろう。
これはもうタクシーだ! どう考えても、浜松町からタクシーに乗ったほうが早い。
そこで「テクシー!テクシー!」と連発してみる(←少女時代か!笑)。こんなときに「タセヨ(乗ってください)」なんて言葉は出てこないものだ。
しかしオジサンはまだ、東京プリンスホテルはどっち方面の電車に乗ればいいのか?的な仕草をする。
だから、どっちでもないんだって!
そんな噛み合わないやりとりをしていたところに、陽気な日本人のお兄さんが登場。
「English OK?(イングリッシュオーケー?)」
何とも軽快な登場に圧倒されつつ、「韓国の方なんですが、英語も日本語も通じなくて……」とお兄さんに説明する。
オジサンは救世主現る!という顔をして、お兄さんにもポケトーク的な画面を差し出して、
「イルボンマル」(日本語で)と言う。
「日本語で、と言ってます」(なぞに通訳はできるわたし)
お兄さんがスマホに向かって「タクシーに乗ったほうが早いです。ワンメーターで行けます」と言うと、オジサンが「おー!」と、はじめて理解を示した!
え、伝わったの? 金額が安いことを言えばよかったの?
そして、「タクシー乗り場まで案内しましょう!」とお兄さんが言って、ふたりはすごーく自然にその場を立ち去って行った。
「あ、じゃあ、わたしはこれで……」というわたしの声はふたりに届いたのかどうか。
なんだ、これ?! 多少韓国語をかじったわたしより、韓国語はまったく話せないけど、グローバルなコミュニケーションに長けたお兄さんのほうが意思疎通ができている!!
結局、コミュニケーションは言語じゃないんだな、という敗北感。しょんぼりしながら、わたしは上野方面のJR LINEに乗り込んだ。
その日はさすがに落ち込んだけれど、翌日、どう言えば伝わったのかをひたすら考えた。また同じような機会があったら、「ムスンネリイッソヨ?(どうしましたか?)」と言って声をかければいいんだなとか、次のシミュレーションができたので、一歩前進したと思いたい。
言語の習得は長き旅。これにめげることなく、これからも地道に勉強を続けつつ、コミュニケーションにも果敢にチャレンジしていきたい、と思った次第。
最終的なゴールは、推しに韓国語でインタビューすること。
一体いつになるやら……。ファイティン、わたし!
また、1年後くらいに経過報告します。
【イベント告知】
4月17日(木)夜にイベントを開催します!
44歳から韓国語の勉強を始め、51歳で韓国映像字幕監修者になった花岡理恵さんをゲストにお招きして、語学習得のポイントについてお話しいただきます。
30分ほどの講演の後は、おいしい韓国料理を食べながら参加者の皆さんと楽しくおしゃべりできればと思っています。
19時頃スタート、場所は都内の韓国料理店を予定しています。韓国語に限らず、語学を勉強している方、ぜひご参加ください!
参加希望は、タイトルに【イベント参加希望】と明記の上、担当岸のメールアドレス(nozomi.kishi@life-media.co.jp)まで。
花岡理恵さんの決断物語はコチラ↓