有村藍里さんメイン

コンプレックスだった口元を変えて、少しでもかわいくなりたい! 2018年の秋、顎の骨格を変える美容整形手術を受けることを決めました。

生まれ育ったのは、兵庫県伊丹市。両親が共働きだったため、曾祖母の家で過ごすことも多かった日々。家で静かに遊ぶのが好きな、おとなしい子どもでした。

小学校を卒業するタイミングで母と妹との3人暮らしが始まりました。その頃から、もともと人見知りの性格もあって、学校でうまく友達が作れず、だんだん登校しなくなりました。
家で寝ていたり、漫画を読んだり、アニメを観たりして過ごす毎日。あまりにも人と接することがないので、「自分ってどんな人間だったかな?」とわからなくなっていました。

自分ではない誰かになりたい
高校生からモデルの仕事をスタート

芸能の仕事に興味を持ったきっかけは、小学生のときに母が買ってくれたティーンズ向けのファッション誌でした。『ピチレモン』(学研プラス)や『nicola(ニコラ)』(新潮社)を見て、「私もこの雑誌に載っているようなモデルさんみたいになりたい!」と思いました。自分の顔がかわいいと思っていたわけではありません。ただ、雑誌に映るモデルさんがとてもキラキラして見えたのです。かわいい洋服を着て、かわいく写真を撮ってもらうことに憧れました。

実際に芸能活動を始めたのは、高校生になってから。自分で芸能事務所を探し、ポートレートモデルの仕事を始めました。中学時代はほとんど家に引きこもっていたのもあって、自分ではない誰かになれる場所を探していたのです。撮影の仕事のために、はじめて1人で電車に乗りました。

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高校時代から芸能活動をスタート


一般のカメラ好きの方の被写体となるポートレートモデルの仕事は、撮ってくださる方から「素敵だね」と言葉をかけていただいたり、「いい写真が撮れた」と喜んでくださったり、自分を必要としてくれる人がいてくださることがとても嬉しかったです。

高校卒業後も数年間活動を続け、そろそろ新しい挑戦がしたいなと思っていた頃、当時所属していた事務所の社長に「東京に進出するけど、一緒に行かないか?」と声をかけてもらいました。
「東京で勝負をしてみたい」と思い、大阪と東京を行き来する日々が始まったのは2012年の春でした。

東京ではグラビアモデルの仕事を始めて、世界が大きく広がりました。一方で、どうしても自分の顔が好きになれない自分がいました。
特に、気になっていたのが、笑ったときに歯茎が見える「ガミースマイル」です。気になると、撮影中も口元を隠してしまったりして、うまく笑えなくなっていました。

まずは歯並びを良くしようと考え、数年かけて歯列矯正をしました。しかし、歯並びが良くなったら、余計にガミースマイルが強調されるようになってしまいました。

突然、「有村架純の姉」と報道
妹に迷惑をかけたくない

コンプレックスを抱えながらもグラビアモデルの仕事を続け、2014年には「TSUTAYAプリンセス」のオーディションでグランプリを受賞。少しずつですが自分のお仕事に手応えを感じられるようになってきていました。
そんなとき、あるスポーツ新聞で衝撃の記事が出ました。
「有村架純秘密の姉、グラビアアイドルだった!!」
それまで公にはしてこなかったことです。ネット検索したら、たくさんのコメントがありました。
「ブス」
「全然かわいくない」
「口元が残念」
「妹に謝れ」

私は突然「有村架純の姉」になってしまった。このときはひたすら、妹に迷惑をかけたくないと思っていました。

憶測でさまざまなことが記事になりました。当時はグラビアアイドルをやめようかと悩みましたが、妹が「私のことは気にしないで!」と言ってくれたことで救われました。

2016年秋に事務所独立と、当時の芸名から本名への改名。
新しい自分になって、再スタートを切りました。
一方で、自分の顔に対するコンプレックスは募っていきます。痛みに耐えながら、骨格を変えるマッサージにも通いましたが、効果なし。
自分の顔を変えたいという想いが高まっていったものの、美容整形はまだ遠いもの。世間でも、隠すべきものという考えが一般的でした。

情報収集を続けて数年、知り合いの方から美容整形の先生を紹介していただき、まずはカウンセリングを受けました。もちろん、リスクもある。それでも、「少しでもかわいくなれるならやってみたい!」と、すぐに気持ちが固まりました。

選んだのは、顎の骨を切って移動させる大きな手術です。自分でも情報を収集し、クリニックでカウンセリングをしたりシミュレーションをしてもらったりして準備を進めました。後遺症や合併症などのリスクの説明も受けましたが、自然と恐怖はありませんでした。むしろ、「絶対やる! 早くやりたい」という気持ちでした。

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顎の骨を切って骨格を変える大手術を決意


母には手術を決めたあとで伝えました。大きな手術だと言うと心配するだろうと思い、「そんなに大きな手術じゃないよ」と。それでも母は、体は大丈夫なのかと私のことを心配してくれていました。

6時間におよぶ大手術
直前に怖くなって大号泣

手術の前日は食事や水分摂取の制限があったので、夜は「喉が渇いたなぁ」と思っていたくらいで、不安も緊張も特にありませんでした。
でも、当日、手術着に着替えて手術室に向かう途中から急に怖くなってきて、涙が止まらなくなりました。

全身麻酔で約6時間の手術です。これまで、大きな病気や怪我をしたことがなく、手術も入院も経験がない。同じ手術を受けた人の手術をYouTubeの動画で見ていたので、「あの大きな手術を私がするんだ」と急に怖くなったのです。

だけど、もう引き返すことはできません。
――仕方ない。乗り越えよう。
号泣しながらも麻酔を打ってもらい、そのまま眠りました。

麻酔から覚めたときには、病室のベッドで寝ていました。のどや肩の痛み、体のだるさがあって、すごい大きな手術をしたんだな、と実感しました。

手術直後、携帯電話で自撮りをして、はじめて手術後の自分の顔を見ました。
――あ、コンプレックスがなくなってる!
まだ顔は腫れていたけれど、想像以上だなと思いました。

顎の骨を固定するため、そこからしばらくは口を開けて食事をすることもできません。小さなストローやスプーンでプリンや離乳食のようなものを食べていました。1カ月後にようやく少し動けるようになり、本格的に活動を開始できたのは、3カ月が経ってからのことです。

誰でも好きなメイクをしていい
呪縛から解放され、ポジティブに

もともと美容整形については公表するつもりも隠すつもりもありませんでしたが、手術前からの整形手術の様子をフジテレビの『ザ・ノンフィクション』が取り上げてくださいました。

放送日が、世間への公表の日。以前の私の顔を好きだと言ってくださっているファンの方々がいます。
――みんな、この事実を知ったらどう思うだろう……。
放送を見た人がどう思うのか、ものすごく不安で緊張しました。

批判的なご意見もあることを覚悟していたのですが、実際には前向きで肯定的なご意見が多かったのには驚きました。決断するまでの葛藤や悩みを番組でしっかり伝えてくださったからだと思います。

美容整形して仕事に復帰してからは、それまで笑顔を躊躇していたのが嘘みたいに、思い切り笑えるようになりました。気持ちもすごく前向きでポジティブになった。
以前は、「自分の顔は変じゃないかな」「私、不細工じゃないかな」と不安で鏡が手離せなかったのですが、整形してからはそういった気持ちで鏡を見ることがなくなりました。
メイクも、これまではコンプレックスを隠すためにしていたものから、かわいく見せるためのポジティブなメイクに変わり、楽しくなりました。
誰でも好きなメイクをしていいし、好きな服を着ていいのに、勝手に「かわいいリップは私には似合わない」と思い込んでいたんです。呪縛から解放されて、心が明るくなりました。

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美容整形後は、自然と笑顔で撮影ができるようになった


体に負担があることでもあるので、美容整形は気軽に人に勧められるものではありません。私自身も、いきなり美容整形に踏み切ったわけではなく、歯列矯正をしたり、骨格マッサージに行ったり、悩みながらいろんな行動を起こし、最後の手段として、美容整形を選びました。
外見に悩む人は、メイクやファッションを変えてみたり、かわいいネイルをしてみたりするなど、できることからやってみるといいのかなと思います。それでも、コンプレックスを抱えてつらい思いをしているなら、美容医療に頼るのも1つの選択肢だと思います。

いまはタレント活動や連載コラムの仕事をしながら、2021年にはファッションブランド「rose bleue(ローズブルー)」を立ち上げさせていただきました。これから、このブランドをもっと大きくしていきたいと思っています。
整形後に仕事が広がったのは、外見が変わったからではなく、おそらく自分の内面が変わったから。自分に自信が持てるようになったことが、表情や態度にも出るようになったのだと思います。

「自分なんか」とネガティブな気持ちでいると、新しいことにチャレンジすることが難しくなるかもしれません。私は整形をきっかけに、前に進む気持ちを少しだけ手に入れることができました。

(文/尾越まり恵、写真/齋藤海月)

有村藍里(ありむら・あいり)
モデル/タレント
1990年8月、兵庫県生まれ。2006年にデビュー。グラビア、バラエティ、舞台、映画など幅広いジャンルで活躍を続ける。2021年にはファッションブランド「rose bleue(ローズブルー)」を立ち上げ、クリエイティブディレクターを務める。
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