実家がイベント関連の事業を手掛けていることは知っていて、スポーツや音楽にも興味があった私は、いつかは3代目として事業継承していくんだろうなと思って育ちました。経営についてしっかり学ぼうと立教大学大学院では経営学修士(MBA)を取得しました。
1998年に、グループ会社の1社である萬世建設株式会社に入社。営業や現場管理として経験を積んだのち、2001年にイベントの企画・制作・運営などを手掛けるバンセイ株式会社に入社しました。当時は華やかな業界で、グループとしても建設関連事業の売り上げをイベント事業の売り上げが追い抜いてきていた時期。私はそこで営業や全体統括を担当し、2009年に専務取締役に就任しました。2019年にはラグビーワールドカップの5会場を受託、2020年に開催予定の東京オリンピック関連の大型受注も決まっており、最高益を予想していたため、私と父はそのタイミングでの事業承継を考えていました。
ところがコロナ禍で東京オリンピックは延期、さらに無観客試合へ。その他のスポーツ、音楽イベントも軒並み中止・無観客となり、2020年は2019年の売り上げから8割減、過去最低の業績となりました。
イベントがなくなりつつあり、売り上げ予測も不可能。そんな中で代表が変わっても混乱するだけ――。
そこで事業承継を一旦諦め、事業の立て直しに注力することを決意。雇用調整助成金などを利用して仕事がない社員には休んでもらうなどの協力を得ながら、何とか全社員を守り抜く決意をしたのでした。不安がっている社員たちを集めて、人々に夢を与えるという私たちの仕事の意義、イベントが持つ力について話をし、この機会に社内改革も進めていきました。
具体的にはベテラン、中堅、若手の数名ごとのチーム制を敷いて20チーム以上をつくり、「新入社員を3年以内に一人前に育てる」という明確なゴールを定めてナレッジの共有とコミュニケーションの活性化を図りました。また、リモートワークに伴うペーパーレス化や社内のフリーアドレス制も導入。社内環境を整備しながら「革信‐BELIEVE IN FUTURE‐」という新たな企業理念を掲げて、コロナ明けの2023年に代表取締役に就任。コロナ禍に環境やモチベーションなどを整えていたことで、就任1年でV字回復に成功。さらに若手社員を中心とした改革プロジェクトを立ち上げ、若手が活躍できる環境整備にさらに注力していきました。
結果、生産性が上がり、離職率も低下。若手社員にも活気が戻ってきました。創業80年以上という歴史を持つ当社ですが、今後も新しいことに挑戦していきます。自発的・能動的に行動できる社員を育てることのできる風通しの良い企業を目指し、更なる成長を目指していきたいと考えています。
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