大学院時代から長く研究を続けてきた、AIを活用した放射線治療計画作成を社会実装するため、2022年に東北大学発ベンチャーとして起業しました。
物理が好きで、物理の知識を生かせる放射線治療の分野に興味を持ちました。そこで大学は名古屋大学医学部の放射線技術科学専攻へ。その後、大学院に進み、修士課程では、医療の現場で経験を積みながら、医学物理士の資格を取得しました。医学物理士は、医師と放射線技師の中間のような職種で、物理の知識をもとに、がんにおける放射線治療計画を立案する専門職です。
博士課程では福島県の南東北がん陽子線センターで医学物理士として働きながら研究を続けました。2011年、博士号を取得したタイミングで、東北大学に新設された医学物理の研究室に誘っていただきました。
10年ほど研究を続けて、放射線AIの特許を多数取得し、論文も発表。この技術を社会実装したいと考えたのですが、日本には放射線治療事業を手掛ける民間企業は十分にはありません。「それなら自分たちで挑戦しよう!」と、2022年に研究室の仲間とともにアイラト株式会社を立ち上げました。
放射線治療は、外科手術、抗がん剤治療に並ぶがんの代表的な治療法です。手術や抗がん剤よりも体への負担が少ないため、手術に耐える体力のない高齢者などを救うことができます。ただ、患部に放射線を当てる技術は発達しているものの、放射線治療を行うには綿密な治療計画が必要です。この治療計画の精度が属人的でバラつきがあるのと同時に、「IMRT」と呼ばれる高度な放射線治療では、作成に6時間もの時間がかかるため、日本では放射線治療の実施率が20%ほどに留まっており、先進国の中でもかなり低い数値となっています。適切な放射線治療を受ければ治ったかもしれない人が、治っていない現実がある。そのことにずっと課題を感じていました。
そこで、私たちはAIを使ってIMRTの治療計画の作成を自動化するソフトウェアを開発しました。治療計画の作成には3つのプロセスが必要なのですが、そのすべてに対応し、治療計画の作成時間を大幅に削減することができます。CT画像を読み込ませるだけなので、ソフトを使用するための特別なスキルは必要ありません。主に、放射線治療の対象となる肺がん、頭頚部がん、子宮頸がん、前立腺がんに適応しています。
計画立案の業務効率化に特化した1号機は、2026年6月に製造販売承認を取得しました。高度管理医療機器(クラスⅢ)のプログラム医療機器として製造販売承認を取得したスタートアップは、国内初です。
今後は、業務効率向上に加えて、治療効果を高める技術を実装すべく研究開発を進めています。マレーシアやタイ、シンガポールなどアジア地域をはじめ、アメリカでの展開も視野に日々挑戦しているところです。
大学の研究費だけでは、社会実装は困難だったと思います。起業して、7億5000万円の資金調達が実現できたから、この事業を進められています。我々への多額の投資は、最先端の放射線治療AIによって、これまで治せなかったがんを治すことへの期待値だと捉えています。製造販売承認を取得し、いよいよ社会実装のフェーズに入りました。ここからが本当のスタートです。期待にしっかり応えていきたいと思います。
(構成/尾越まり恵)
物理が好きで、物理の知識を生かせる放射線治療の分野に興味を持ちました。そこで大学は名古屋大学医学部の放射線技術科学専攻へ。その後、大学院に進み、修士課程では、医療の現場で経験を積みながら、医学物理士の資格を取得しました。医学物理士は、医師と放射線技師の中間のような職種で、物理の知識をもとに、がんにおける放射線治療計画を立案する専門職です。
博士課程では福島県の南東北がん陽子線センターで医学物理士として働きながら研究を続けました。2011年、博士号を取得したタイミングで、東北大学に新設された医学物理の研究室に誘っていただきました。
10年ほど研究を続けて、放射線AIの特許を多数取得し、論文も発表。この技術を社会実装したいと考えたのですが、日本には放射線治療事業を手掛ける民間企業は十分にはありません。「それなら自分たちで挑戦しよう!」と、2022年に研究室の仲間とともにアイラト株式会社を立ち上げました。
放射線治療は、外科手術、抗がん剤治療に並ぶがんの代表的な治療法です。手術や抗がん剤よりも体への負担が少ないため、手術に耐える体力のない高齢者などを救うことができます。ただ、患部に放射線を当てる技術は発達しているものの、放射線治療を行うには綿密な治療計画が必要です。この治療計画の精度が属人的でバラつきがあるのと同時に、「IMRT」と呼ばれる高度な放射線治療では、作成に6時間もの時間がかかるため、日本では放射線治療の実施率が20%ほどに留まっており、先進国の中でもかなり低い数値となっています。適切な放射線治療を受ければ治ったかもしれない人が、治っていない現実がある。そのことにずっと課題を感じていました。
そこで、私たちはAIを使ってIMRTの治療計画の作成を自動化するソフトウェアを開発しました。治療計画の作成には3つのプロセスが必要なのですが、そのすべてに対応し、治療計画の作成時間を大幅に削減することができます。CT画像を読み込ませるだけなので、ソフトを使用するための特別なスキルは必要ありません。主に、放射線治療の対象となる肺がん、頭頚部がん、子宮頸がん、前立腺がんに適応しています。
計画立案の業務効率化に特化した1号機は、2026年6月に製造販売承認を取得しました。高度管理医療機器(クラスⅢ)のプログラム医療機器として製造販売承認を取得したスタートアップは、国内初です。
今後は、業務効率向上に加えて、治療効果を高める技術を実装すべく研究開発を進めています。マレーシアやタイ、シンガポールなどアジア地域をはじめ、アメリカでの展開も視野に日々挑戦しているところです。
大学の研究費だけでは、社会実装は困難だったと思います。起業して、7億5000万円の資金調達が実現できたから、この事業を進められています。我々への多額の投資は、最先端の放射線治療AIによって、これまで治せなかったがんを治すことへの期待値だと捉えています。製造販売承認を取得し、いよいよ社会実装のフェーズに入りました。ここからが本当のスタートです。期待にしっかり応えていきたいと思います。
(構成/尾越まり恵)
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