43歳のとき、ベトナムに新車ディーラーを立ち上げました。
ロイヤルオートサービスは、新車販売・中古車販売・車両整備等を手掛ける会社で、幼い頃からいずれ創業者である父の後を継ぐのだと思って生きてきました。親の言いつけ通り大学卒業後は大手都市銀行(旧大和銀行)に入行。紆余曲折の末、入行6年目に父から電話があり「やっぱりおまえに継いでもらいたい」と言われて、2001年にロイヤルオートサービスに入社しました。
創業期の中小企業における社内ルールは未整備のことが多く、銀行との違いに驚愕しました。お客様をお迎えするための場所とは到底思えない店舗の様子、書類が煩雑しているデスク、ぎりぎりまで休暇の決まらないシフト……。「これはまずい!」と国際規格のISO9001を取得して社内ルールを整理し、社内組織改革に尽力。その後、2013年に満を持して代表取締役社長に就任し、幹部研修や営業研修を積極的に導入しました。。
そんな2014年、米国テスラのショールームを視察に行った際に、EV(電気自動車)の完成車を目の当たりにし、大きな衝撃を受けました。これから増えていくだろうEV車の部品数はガソリン車の約10の1程度で、中古車販売と自動車整備業をメインとする当社にとって、このような画期的なEVの販売が進めば中古車自体の在庫はもとより、自動車整備の需要も減少していくことが予想されました。
「このままではまずい」と考えて注力を始めたのが開店休業状態だった新車販売事業です。中古車は即日~1週間ほどで購入を決めるお客様が多い中、新車は1カ月から半年ほどかけて購入を検討します。もともと開店休業状態だった店舗では年間1台ほどしか新車を販売していなかったのでその営業手法の違いに最初は戸惑い、軌道に乗せるのに2~3年を要しました。
何とか数字がついてきたところで、新車ディーラーとしてもさらに幅を広げていきたいと考えていたところ、中古車販売事業者を主軸に事業を運営してきたことが大きなネックになることを知ります。そもそも国内の新車ディーラーは飽和状態にあり、新しく始めたいと立候補しても中古車販売事業者は何となく下に見られてなかなか声がかかりません。そこでメーカー出身のOBに話を聞いたところ「海外で新車ディーラーの実績を作り、その実績を踏まえて国内で勝負してみたら可能性があるかもしれない」とアドバイスを得ることができました。
ニュージーランドやアフリカ、東南アジアなど、いくつかの候補地を選定して調査を始め、最後に残ったのがベトナムです。ベトナムは新車ディーラーの数もまだまだ少なく、自動車の嗜好性も日本と似ています。何より「GDP(国内総生産)が3000ドルを超えると自動車業界が発展する」と言われていますが、当時のベトナムはちょうど2800ドルほど。「ここしかない!」と思いました。
早速事業開始のための準備に着手するのですが、これがなかなかうまくいきません。ベトナムで事業を展開するためには政府からさまざまなライセンスを取得する必要があるのですが、その条件がまた複雑怪奇。「Aのライセンスを取得するには、Bのライセンスが先に必要」と書いてある法律もあれば、また違う法律には「Bのライセンスを取得するには、Aのライセンスを先に取得することが必要」と記載されていることも。法整備が整っているとは言いがたく、1つのライセンス取得に1年かかることもありました。そうこうしている間にコロナ禍に突入。結局事業開始までに7年という期間を要しましたが、2024年、ようやくベトナムホーチミン市に新車ディーラー「Royal Auto Japan」をオープンすることができました。
ベトナムは日本と同じ1億人ほどの人口がありますが、車の販売台数は日本の10分の1にあたる50万台ほどで、購入者は富裕層です。文化の違いや顧客層の違いに戸惑うなど、トラブルのつきない1年目でしたが、まずは第一歩を踏み出せたことを自信にしながら、3年後にはベトナムに2店舗目を、5年後にはカンボジア市場への進出を計画しています。
ひとまず2025年は昨年の4倍となる800台の販売を目指していきたい。そうして海外での実績を積み上げ、2028年を目途に国内での新車ディーラー権の獲得を目指していきたいと思います。
株式会社ロイヤルオートサービス ホームページ