小山さんショート

介護に携わる女性も、誰に遠慮することなく自分の人生を生きていい。そんな思いを伝えるため、52歳で起業を決意しました。

20代で長女を出産した直後、夫の勤めていた会社が倒産。夫はショックで鬱状態になり、しばらく働けませんでした。
そんな夫を見て、組織の事情に左右されない環境で経済的に自立したいと考え、2000年にフリーランスとして起業します。しかし、うまくいかず事業をたたみ、しばらくは会社員として働くことにしました。失敗を糧に次なるチャンスを狙っていたとき、たまたま出会ったのが、高齢者のご家族に高齢者施設を紹介する会社でした。

実は、10代の頃、父方の祖母が要介護状態になり、母親が介護をしているのをずっと見てきた経験があります。祖母を看取るまでの9年間を母は介護に捧げ、自分の時間はほとんどありませんでした。子ども心にそんな母の姿を見るのがとてもつらく、どうしても女性が家庭の犠牲になってしまうことにジレンマを感じていました。そんな原体験を持つ私が介護の仕事に出会ったのは必然だったのかもしれません。

2018年から会社員として提携している高齢者施設をご家族に紹介する仕事を始めました。ただ、多くの社員が「日当たりがよい施設です」「風通しのよい場所です」など、まるで不動産物件のように高齢者施設を紹介していることに私は違和感を覚えました。ご家族の心が置き去りになっているように感じたからです。大事なのは、大切な親族を高齢者施設に預けるご家族の気持ちに寄り添うことのはず。多くのご家族は親を高齢者施設に預けることに罪悪感があり、その思いを無視することはできないと思いました。

――自分の思うように、介護の仕事に向き合ってみたい。
そう考え、フリーランスとして紹介業をやってみようと2度目の起業を決意しました。

2020年に独立した後、2023年には一般社団法人として法人化。いまは高齢者施設の紹介を軸にしながら、女性のコミュニティを作ったり介護に関する情報を発信したりして「頑張らない介護」の啓蒙活動にも力を入れています。

親の介護は、ある日突然やってきます。そんなときに頑張らなくてすむためには、準備が必要だと思います。介護にはどれくらいのお金が必要なのか。国や自治体にはどんな支援があるのか。いまの仕事で介護休暇はとれるのか。基本的な知識を身に着けておくこと。そして何より大事なのは、日ごろからご両親とコミュニケーションをとっておくことです。多くのご家族は「自分は何もやってこなかった」という思いから、罪悪感を持ってしまうのです。親子のコミュニケーションのきっかけとなるような記述式のノートも開発中で、少しでもご家族の罪悪感を軽減する手助けができればと思っています。

しっかりと準備をした上で、親の介護にどう向き合うのか。さまざまな選択肢がある中で、女性たちが自分らしい選択をできるように、そっと背中を押せるような活動をしていきます。

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