コロナ禍に大胆な経営改革を断行。社員数を53 名から28名に削減しながらも、売上を23億3000万円、全社員の平均年収を15%増額することを決めました。
名古屋市にある、独立系の時計・宝飾品総合卸商社である東海時計商事の3代目として生まれたわたし。愛知県の南山大学経済学部卒業後に入行した第三銀行を4年ほど勤めたのち、27歳で先代の父より戻ってくるよう言われ、東海時計商事に入社しました。
入社当時は銀行にいたからこそわかる経営の数字の悪さに驚き、売り上げより借金が多かった当時の経営を立て直すことに尽力。正常化を図れた36歳のときに社長に就任し、そこからは退職金などの事業承継の後処理に翻弄されました。
気が付くと2020年に突入。新型コロナウイルスの大流行により、2020年4月からの売り上げは3カ月連続40%ダウンの大打撃を受けました。そんなとき、敢えて業界に染まりすぎないようにと異業種交流会などに積極的に参加していたわたしは、先輩社長に「経営者は従業員にちゃんと高い給与を支払ってこその社長だ」と言われたことをふと思い出しました。そこで「コロナウイルスよりもネガティブウイルスのほうが怖い!」と経営改革を決意したのでした。
当時ショッピングモールで直営店を5店舗展開していましたが、地代と人件費を合わせて毎月300万円以上の出費があることを鑑み、3店舗の閉店を決定。代わりにわたしと部長とでホテルのスイートルームなどのラグジュアリー空間を活用した完全予約制の展示会イベントを展開し、「時計・ジュエリーの大衆化」を謳って100回ローンの金利を当社が負担し、金利0%を実現しました。すると口コミで評判が広がり、またたく間に直営店3店舗分の売り上げをイベントで構築することに成功。また、ネット通販にも力を入れてECの店舗数を増やし、コロナ前より約1.5倍の売り上げを実現しました。さらに、物流の外注化を実施し、人員の見直しによる大幅な経費削減に注力。「大切なひとを大切にする」経営に舵を切った結果、20名ほどの人員が減ったにも関わらず、売り上げは前年比を大きく上回る23億3000万円を達成し、全社員の給与を15%引き上げることに成功しました。
展示会イベントは月に1、2回、東京・名古屋・大阪・福岡をはじめとする主要都市で定期開催しており、その他の都市も新たに展開を予定しています。今後は東海時計単体で30名30億円を達成し、社員の平均年収を700万円台に乗せていきたい。創業67年の会社でもあるので、もちろん100年企業も目指します。時計やジュエリーは、身に着けることで充実感や幸福感が生まれるものです。一生に一度は身に着けていただきたい。これからも「時計・ジュエリーの大衆化」を目指し、社員を大切にする経営を進めていきたいと思います。
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