村岡葉子

わたしの人生の決断は、温泉を核にしたウェルビーイングな場づくりをすると決めたことです。

大学卒業後、電気メーカーに就職したわたしは、法人営業として働く傍ら、週末は社会人アメフトチームのチアリーダーとして活動を続けていました。そんな生活が続いていた入社5年目、「グローバルに活躍するリーダーを育成する」という目的のもと、カンボジアでの研修が始まりました。カンボジアでは、内戦で途絶えてしまったコショウの生産を復活させるために活動している人やカンボジアに学校を作りに来た人など、さまざまな職業、目的で生きている人たちにたくさん出会いました。

好きな人生を歩んでいいんだ、と漠然と感じた私は、帰国後、プロ野球の楽天イーグルスのチアリーダーオーディションに応募してみることに。もともと野球は好きでしたし、いつか野球のチアリーダーもやってみたいと思っていたのですが、結果は見事合格。すると翌日地元紙に掲載されてしまい、公の話に。上司からも家族からも大反対をされましたが、アメフトの遠征で仙台に行った際に楽天イーグルスの試合を見たことがあったわたしは、そのアットホームであたたかな球団の雰囲気に惹かれ、楽天イーグルスのチアリーダーとして仙台への移住を決意。丸3年の活動の末に引退し、スポーツマーケティング会社へ転職しました。

コロナ禍で時間が増えたこともあり、知人のつてで岩手県北上市をよく訪れるようになり、そのまま仙台との二拠点生活を開始しました。会社が副業を解禁すると、スポーツインストラクターとしても働き始め、コロナ禍が明け始めた2022年、中高年をはじめ幅広い世代の心と体の健康をサポートすべく、東北ウェルネス倶楽部を立ち上げ、独立。

さまざまな講座やプログラムを企画しましたが、いずれもプログラムの時間だけで関係性が終わってしまうことがもったいないと感じるように。もっと深く人と関わり、「場づくり」ができるようにならないか。そんなことを考え始めた2024年4月、時々訪れることのあった秘湯・夏油(げとう)温泉観光ホテルが売りに出されていることを知りました。

宿泊施設をうまく活用することで、「心と体の健康」という起業以来持ち続けてきたテーマをいまよりもさらに実現できると感じ、翌5月に内見へ。オーナーとの交渉を開始しました。

6月に事業計画を策定し、ひとまず有志で清掃を開始。2024年11月現在まだまだ準備段階ではありますが、来年2025年の春にはリニューアルオープンにこぎつけたい。

夏油温泉はかつて「東の大関」とも呼ばれ、道路が整備されていなかった時代に濁流の川を超えて丸太の橋を渡らなければたどり着けない奥地にあって、それでも人が集まってきた名湯です。電波も届きづらいのでデジタルデトックスをしたい人にもおすすめですし、将来的には温泉の運営だけでなく、ヨガなどのプログラムも用意して、さまざまな体験ができる場所を提供していきたいと思っています。

まずは無事に温泉再開までこぎつけ、今後のウェルビーイングな場づくりの足掛かりにしていきたいと思います。

(構成/岸のぞみ)

夏油温泉を愛する会 ホームページ


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