2018年、従業員の働き方を見直すとともに、採用や定着を目指して、最新の冷凍設備を備えた新工場を建設するという経営判断をしました。
東筑軒は、1921年の創業から100年以上にわたり、福岡県北九州市で「かしわめし」という駅弁を製造・販売しています。私は大学卒業後、6年ほどアパレル業界で働いた後に東筑軒に入社し、現在は4代目の社長を務めています。
東筑軒の創業当時、駅弁といえば幕ノ内弁当が主流でした。創業者が何か地域の特色を生かした弁当を作れないかと考え、福岡県産の鶏に注目。鶏ガラスープと秘伝の調味料で炊いたご飯の上に、かしわ肉、錦糸、刻み海苔をトッピングした「かしわめし」が生まれました。
現在は、北九州市内の駅の売店で販売するほか、仕出しでの提供、かしわうどんの立ち食い店も運営しています。また、本社最寄りのJR折尾駅では、いまでは珍しくなった駅構内での立ち売り販売もしています。
通常時は1日に2000食程度、多いときは1万食以上のかしわめしを作ります。
新工場を建てる前は、深夜2時にスタッフが工場に入って弁当を作り、朝出荷していました。シフト制でしたが、やはり深夜からの労働は大変です。社員のために、労働環境を改善したい。環境改善が、新規の採用や定着にもつながればと考え、思い切って設備投資し、製造工程を効率化することにしました。
冷凍した具材を解凍して使えば、製造時間を短縮することができます。そこで、最新の瞬間冷凍ができる機械と保存用の冷凍庫を備えた新工場の建設を決意しました。本社の近くに土地から探して建設し、2019年5月から新工場の稼働をスタート。いちばん大事にしたのは、長く皆さんに愛されてきたかしわめしの味を変えないことです。ご飯はどうしても味が変わってしまうために、まずはご飯の上にのせる具材から瞬間冷凍に挑戦し、味が変わらないことを証明できたために、具材の冷凍を導入しました。
ところが、すぐにコロナ禍に突入してしまいます。駅から人が少なくなり、売り上げの中心だった仕出しの注文も激減。新工場の建設には融資を受けていたので、ここで挑戦を止めるわけにはいきません。
試行錯誤しながら、ご飯も冷凍できないか、検証を続けました。その結果、炊き立てのご飯であれば、瞬間冷凍で味が変わらないことが実証できたため、自動販売機やインターネットで冷凍かしわめしの販売も始めました。冷凍かしわめしの味をさらに高めていくべく、いまも研究を続けています。
コロナ禍を脱し、売り上げは徐々に回復傾向にあります。新工場の設立後、スタッフが深夜から働くことはなくなりました。新工場を設立すると判断して良かったと思っています。一方で、タイミングとしてはベストだったとは言えません。新型コロナを予測することは難しかったと思いますが、やはり経営判断は、機をとらえることが重要です。そして、決めた以上は信じて突き進むこと。また、新型コロナのような不測の事態が起こったときには、勇気を持って方針転換することも大事だと思います。
100年以上にわたり愛されてきた東筑軒の「かしわめし」。製法は時代に合わせてアップデートしながら、味だけはトレンドに流されず、これからもしっかり守っていきたいと思っています。
(構成/尾越まり恵)
東筑軒は、1921年の創業から100年以上にわたり、福岡県北九州市で「かしわめし」という駅弁を製造・販売しています。私は大学卒業後、6年ほどアパレル業界で働いた後に東筑軒に入社し、現在は4代目の社長を務めています。
東筑軒の創業当時、駅弁といえば幕ノ内弁当が主流でした。創業者が何か地域の特色を生かした弁当を作れないかと考え、福岡県産の鶏に注目。鶏ガラスープと秘伝の調味料で炊いたご飯の上に、かしわ肉、錦糸、刻み海苔をトッピングした「かしわめし」が生まれました。
現在は、北九州市内の駅の売店で販売するほか、仕出しでの提供、かしわうどんの立ち食い店も運営しています。また、本社最寄りのJR折尾駅では、いまでは珍しくなった駅構内での立ち売り販売もしています。
通常時は1日に2000食程度、多いときは1万食以上のかしわめしを作ります。
新工場を建てる前は、深夜2時にスタッフが工場に入って弁当を作り、朝出荷していました。シフト制でしたが、やはり深夜からの労働は大変です。社員のために、労働環境を改善したい。環境改善が、新規の採用や定着にもつながればと考え、思い切って設備投資し、製造工程を効率化することにしました。
冷凍した具材を解凍して使えば、製造時間を短縮することができます。そこで、最新の瞬間冷凍ができる機械と保存用の冷凍庫を備えた新工場の建設を決意しました。本社の近くに土地から探して建設し、2019年5月から新工場の稼働をスタート。いちばん大事にしたのは、長く皆さんに愛されてきたかしわめしの味を変えないことです。ご飯はどうしても味が変わってしまうために、まずはご飯の上にのせる具材から瞬間冷凍に挑戦し、味が変わらないことを証明できたために、具材の冷凍を導入しました。
ところが、すぐにコロナ禍に突入してしまいます。駅から人が少なくなり、売り上げの中心だった仕出しの注文も激減。新工場の建設には融資を受けていたので、ここで挑戦を止めるわけにはいきません。
試行錯誤しながら、ご飯も冷凍できないか、検証を続けました。その結果、炊き立てのご飯であれば、瞬間冷凍で味が変わらないことが実証できたため、自動販売機やインターネットで冷凍かしわめしの販売も始めました。冷凍かしわめしの味をさらに高めていくべく、いまも研究を続けています。
コロナ禍を脱し、売り上げは徐々に回復傾向にあります。新工場の設立後、スタッフが深夜から働くことはなくなりました。新工場を設立すると判断して良かったと思っています。一方で、タイミングとしてはベストだったとは言えません。新型コロナを予測することは難しかったと思いますが、やはり経営判断は、機をとらえることが重要です。そして、決めた以上は信じて突き進むこと。また、新型コロナのような不測の事態が起こったときには、勇気を持って方針転換することも大事だと思います。
100年以上にわたり愛されてきた東筑軒の「かしわめし」。製法は時代に合わせてアップデートしながら、味だけはトレンドに流されず、これからもしっかり守っていきたいと思っています。
(構成/尾越まり恵)
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