母の影響で花の世界に興味を持ち、フラワー装飾技能士という国家資格を取得した私は、30歳のときにフラワーコーディネーターとして独立。その後、39歳で結婚し、翌年息子を出産しました。ところが2021年の年明け、右胸に初期のがんが発覚。症状から右胸を全摘出するか、抗ガン剤で様子を見るか、どちらか選択するよう言われました。
このとき、息子は2歳。夫とは離婚し、私はシングルマザーになっていました。
一度家に帰って考えるよう言われましたが、私は「全部取ってください」とその場で即答しました。息子を育てるのだという使命感でいっぱいで、様子を見ている時間はない、と考えたのです。驚く母と医師を前に1日も早く手術をしてほしいと告げ、その日のうちに手術日を確定させました。
強い覚悟で摘出を決意したものの、実際に術後の胸を見たときは驚き、お風呂に入るたびに落ち込みました。そんなとき、付き合いの長い写真家の友人が「術後の君の写真を撮ってあげるよ」と声をかけてくれました。
いざ息子と触れ合いながら撮影をはじめてみると、少しずつ気持ちが晴れていくのを感じました。モニターチェック中に見る画面の中の自分はとても楽しそうで、女性らしさも少しも損なわれていませんでした。
――胸がなくても、私、幸せなんだ!
翌2022年には、右胸の乳房再建手術に伴う術前検査の一環で「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」だったことが判明。私のタイプは45~85%の確率で60代までにがんを発症するとされています。「がん発症のリスクを残してはおけない」と、右胸の再建手術の際に、予防のために左胸と卵巣卵管の全摘出を決意。術後、また写真を撮ってもらうことにしました。
乳がんで苦しむ人たちにも、この気持ちを知ってほしい。そんな思いで、乳がん専門フォトサービス「UNVEIL」を立ち上げました。サービス名の「UNVEIL」は、ヴェールを脱いで外見的に新しい体になったとしても、ありのままの自分を愛そう! という思いを込めて名付けたもの。2023年夏からモニター募集を開始し、来年には写真展を開催しようと思っています。ただの記念撮影ではなく、「病気と闘うあなたが最高に美しい!」と伝えるための、生きる力を与えるための写真。私の挑戦はまだ始まったばかりです。